【漫画家・江口寿史氏インタビュー】古いチューダーやロレックスも好きだけど80年前後のちょっとダサいデジタル時計も好きなんですよ!
―――セイコーのスピードタイマーも渋いですね。 「この辺は割と最近ネットオークションでね。状態のいいのを吟味して慎重に入札するんです。上げている写真を見ればどんな出品者か推察できるんですよ。ピンボケの雑な写真を上げているような人からは決して買いません。きれいな写真で説明もしっかりしている人から買えばだいたい間違いないです。あとは香港にあるWMTも気になるブランド。ヴィンテージのロレックス風腕時計をいっぱい出してるんだけど、それが日本のレプリカジーンズみたいにヴィンテージ加工されてるんですよね。そのセンスが絶妙に良くて、けっこうな本数買いました。そんなことをやっているうちに時計の数が増えてきて、そんなに持っててどーするの?って感じですよ。でも、例えば昔の風防ガラスの丸っこくなっているカーブを眺めているだけで、ちょっと陶然としちゃうんですよね。あまり人に言えないけど、夜中にずーっと何本もの時計を眺めたり、着けたり外したり(笑)、デジタル時計の何時何分何秒まで正確に合わせたりしていることもあります(笑)」 ―――お持ちの時計はどれも現役ですか? 「ほとんどどれも使ってますね。日によって着け替えたりもする。特にイベントや展覧会で地方に行くときには、今日はどれ着けていこうかなって迷ったりします。地方に行ったときは、散歩の途中で現地の古い時計店をのぞいたりっていうのもよくやります。掘り出し物との出合いを求めてね」 ―――今回OUTLINEとのコラボ時計の監修をするようになった経緯を教えてください。 「実はインスタグラムなどで面白そうな時計はいつもチェックしていて、特にコロナ禍以降はそうやってネットで時計を探す機会が増えていたんですよ。それでたまたまOUTLINEが出していた前のモデルを、通販で買ったりしてたんですよ。それで僕が時計好きなことを菊地さん(OUTLINEプロデューサー)がお知りになって、時計作ってみませんか?って話をいただいたんです」 ―――いままで時計の製作を手がけた経験は? 「もちろんないです。時計ってあまりデザインのしようがないってイメージがあったんですよね。しかもマンガ家が出す時計って、文字盤に自分の作品のイラストが入ってたりしてね、そんなのダサいじゃないですか(笑)。僕もファンサービス的にイラスト入りの時計を少しだけ出したこともあったけど、そういうキャラクター時計だったらあまりやりたくなかったんです。スウォッチとかならね、成立しますけど。横尾忠則さんのスウォッチはカッコよかったですから。だけど機械式でそれはやりたくないなと。だからお話をいただいたときも、イラストは一切入れたくないんだけどって言ったら、それでもOKだって言ってくれたので、じゃあやってみようかって。表にイラストを入れない代わりに、裏ブタに白いワニの刻印入れてますが。これも本音を言えばそんなに入れたくなかったんだけど、今回の時計のテーマとも被ってるし、裏ブタならまぁいいか、と(笑)」