【漫画家・江口寿史氏インタビュー】古いチューダーやロレックスも好きだけど80年前後のちょっとダサいデジタル時計も好きなんですよ!
少年ジャンプの漫画家出身でありながら、現代の風俗やカルチャーを巧みに取り入れた女性画を描く、当代を代表する人気イラストレーターとしての顔を持ち、近年はイラストレーション展を全国の美術館で開催し注目を集め、かつてリアルタイムで少年ジャンプの読者だった中高年世代だけでなく、若い世代にもファン層を広げている江口寿史氏。 【画像】江口寿史氏のコレクションとオーバータイムの詳細写真! このほど、時計ブランド“OUTLINE(アウトライン)”とのコラボ企画としてセイコー製のGMT機能付き自動巻きムーヴメントを搭載する本格機械式腕時計 “オーバータイム”(6万9300円)を初監修。何と6月に実施したクラウドファンディングにおいて一部商品は5分で完売。全商品もほぼ1時間で完売するほどの人気を博した。 そんな江口寿史氏の、腕時計に対する思いや今回監修したアウトライン・オーバータイムについての話をじっくり聞いた。
―――江口先生の時計コレクションを拝見させていただくと、統一感がありますね。 「いろいろ持っているように見えて、そんなに深くはないんです。高校に入ったときに、入学祝いにもらったシチズンが最初の時計かな。でも、当時は時計を腕につける習慣がなくて、ポケットに入れて、必要な時にだけ取り出して見る感じでしたね。1977年にマンガ家としてデビューすることになったときに、なんだかわからないけど父親が買ってくれた思い出のデジタル時計(セイコー クォーツ A129)があるんですよ。マンガ家になるんだから、時間を守れって言いたかったんですかね(笑)。当時としてはそこそこ高かったと思います。日常的に腕時計をするようになったのはその時計からですね。ちなみにそのセイコーは、ずっと後になって同じ時計の色違いを吉祥寺の古い時計店で発見したんですよ。新品同様のデッドストックで、値段も当時のまんまで売っていた。これはもう買うしかない運命だろうって手に入れました」 ―――シンプルで実用性の高いモデルがお好きなようですが。 「機械式が好きですね。ロレックスやチューダーの古いスポーツモデルが好き。僕が好きだったころの、チュードルと呼んでた頃のチューダーはリューズがロレックスと一緒だったりしてね。ゆるさがあった。逆にいえば、いまのチュードルはなんかカッチリし過ぎてて好きになれません。ましてや昨今のロレックスの、成金みたいなゴテゴテした感じは全然好きじゃないです。あとは1980年前後のセイコーやカシオのちょっとダサいデジタル時計も好きなんですよ。ダサかわいいっていうか、当時の視点で見た近未来感というか未来への盲目的な信頼みたいなのが感じられるのがいい」 ―――最初のセイコーをプレゼントされてからは? 「90年代前半くらいには、スウォッチにハマりました。その後にカシオのデータバンクやG-SHOCK。一時期はすごい本数持ってました。ただG-SHOCKってタフっていわれてるけど、10年も経つと加水分解でボロボロに壊れてきますよね。タフじゃないじゃねえか!っていう(笑)。そんなのでだんだん買わなくなったんですよね。機械式時計に目覚めたのはその後です」 ―――初めて手に入れた機械式時計は何ですか? 「1992年の誕生プレゼントで、ロレックスのエクスプローラー II をもらったんです。中古ですけどね。そのときの価格が27万円。いまじゃ考えられないですよね(笑)。あのときにもっと機械式時計にハマって買い漁っていれば、いまならひと財産ですけど。いまはロレックス高すぎですよね。エクスプローラー II でも初期型のやつ(Ref.1655)とか、デイトナのポール・ニューマンなんて本当にすごく好きだし欲しいと思うけど、とても手が出せないですねえ。なんかね、時計に500万とか1000万とか出す感覚がないんですよね(笑)。もし手に入れても勿体なくて普段使いなんてできないと思うし。もうちょっと早く気づいていればよかったな。その憧れがあったから、今回のOVERTIMEの元ネタもそんな時代のデザインだったんです」