【闘病】『検診へ行った自分を褒めたい』海外在住で“乳がん”を早期発見。「死」を感じて変わった人生観
「検査へ行った自分を褒めたい」家族・周囲の支えと、記録として残すことの意味
編集部: では、手術を終えてから今の体調はいかがでしょうか? 加藤さん: 手術から1年以上経ちました。最初の一年間は、3カ月ごとに病院で担当の先生と面会・触診をして、術後の経過を見ていました。1年をすぎてから10年くらいは、半年に一回など定期的にモニタリングをする予定です。 今の体調はすごくよいのですが、3カ月前に手術を受けていないほうの胸に違和感を抱いて病院へ行きました。 検査を受けると「何か」が見つかったそうなのですが、組織検査で組織を取ろうとした時に分解されてなくなったらしく、医師からはおそらく良性だろうと言われました。右の胸の手術後だったこともあり、今後も継続的にモニタリングしていく予定です。 編集部: 術後から1年以上は経過を見続けていくとのことですが、具体的に今なにか治療をされていますか? 加藤さん: 医師からは2つの選択肢を与えられていて、一つはこのまま経過を見ていくこと。もう一つは放射線治療を受けることです。乳がんは、術後1年後から再発する可能性が出てきます。 放射線治療をすることで、再発率をかなり低く抑えることができると医師から伝えられました。ですが、私の場合放射線治療は一度しか受けることができず、仮に再発してしまった場合は乳房を切除するしかありません。なので、再発時のために放射線治療という選択肢はとっておこうと決め、受けませんでした。 編集部: 乳がん発覚から治療を通じて、何か心の変化はありましたか? 加藤さん: 子どもが小さかったこともあり、毎日の忙しい生活にかまけて自分自身を見ることができていませんでした。ですが、まだ若い・まだ死なないと思っていたところ、「死」をすごく近くに感じました。 ただなんとなく毎日を過ごしていって、いつか死んでしまったらすごく後悔が残る、と思ったんです。 毎日ちょっとでもいいから前進していき、5~10年後に理想の自分になれたらいいなと思いました。そのために、本を読む、料理を覚えるなど、毎日一つでもいいからステップアップできることに取り組むようになりました。 編集部: 闘病期間中の心の支えは何でしたか? 加藤さん: 圧倒的に家族の存在です。私がどんな時にでも無条件にケアしてくれました。特に夫は家事全般や子どものお世話をしてくれて、私がいなくても家庭が回るように頑張ってくれました。 加えて、日本にいる私の家族や身近な友人からも励ましや支えの言葉をもらったので、「私って大事にされているんだな」と実感しました。そして、「まだまだ死ねないな」と強く思いました。 編集部: 病気を経験した辛い時期の自分に何と声をかけますか? 加藤さん: 「検査に行って本当に良かった。Good job!」と伝えたいです。日本と違ってオーストラリアでは検査の促進が全くありません。もし検査へ行かなかったら、今も気づかずに悪化していたかもしれません。検査に行った自分はベストな決断をしたなと思います。 乳がん以外の病気も定期検診で見つかるものが多いので、自覚症状がなくとも定期的に検診に行くのが大事だなと思いました。 編集部: 加藤さんはご自身でYouTubeも発信されています。普段は美容に関するお話をされていますが、視聴者も多い中で「乳がん」という自分自身のお話をするのはかなり勇気がいることかと思います。なぜ発信しようと考えられましたか? 加藤さん: 私自身が乳がんになった時、自分が本当に欲しい情報がなかなか手に入らなかったからです。乳がんと告知をされて帰宅した後、今日のフレッシュな気持ちを撮影して、手術に至るまでの経過をビデオで収めようと決めました。 最初から最後までリアルタイムでまとめている方もいないので、誰かの役に立てばいいなと思ったのが理由です。 編集部: 最後に、読者の方へメッセージをお願いします。 加藤さん: 「まさか自分が」と思う方はすごく多いと思います。私自身もがん家系ではないので「まさか」と思っていました。でも今は9人に1人の割合で乳がんになる時代です。 私のような、早い段階での発見で良くなるケースもあるので、とにかく一日でも早く検査に行くことをおすすめします。