考察『光る君へ』25話 まひろ(吉高由里子)を娶ったとわざわざ報告する宣孝(佐々木蔵之介)、動揺を隠せない道長(柄本佑)
ウニを獲る海女
洪水被害はまひろの住む地域にも及んでいた。 いとの福丸への「男はこういうのが尊い」評は、田辺聖子『私本・源氏物語』に出てくるたくましい中年女のようだ。光源氏に仕える中年男性を主人公に、乙丸や百舌彦たちのような 庶民の暮らしと男女関係も描かれているので、おすすめしたい。 そしてきぬちゃん、ウニを獲る海女だったのだね! きぬ役の蔵下穂波は、2013年の朝ドラ『あまちゃん』に出演していた。もしや、それに繋げての設定か。
宣孝は気づいていた
まひろを娶りますと、道長にわざわざ報告して反応を楽しむ宣孝。それを聞いた瞬間、めりめりっと書類を握り潰しそうになる道長に大笑いしてしまった。ごめんね道長。 そして一方で宣孝は、まひろには「左大臣様にお前を妻としたい旨もお伝えした」「あとから意地悪されては困るからな」と告げる。 宣孝はやはり4話の時点で、まひろといる三郎が右大臣家の三男坊・道長だと気づいていたのでは……ドラマレビュー4回でもそのことは書いた。 ところで、この場面でまひろが読み上げているのは白楽天『新楽府』だ。 「君の目は見えず門前の事……」 君とは君主、天子のこと。天子には宮殿の門前で起こっていることは見えていない、という意味だ。民の苦しみが目に入っていないような帝政の批判のように聞こえる。 職御曹司の場面で、公任と白楽天の漢詩を題材に優雅に和歌を作った清少納言を描写し、洪水に見舞われ泥だらけの自宅で同じく白楽天の詩を読む紫式部を描く。 香炉峰の雪の登華殿と疫病の悲田院とを対比させた、16話と同じ構図だった。
初々しくない初夜
百舌彦(本多力)がまひろのもとに、道長からの結婚の祝い品を運んできた。 「長い月日が流れましたので」「まことに」 ふたりの間に流れる、万感の思い。そして祝辞は、道長自筆ではなかった。 心を決めた、祝い品だ。 それを受けてまひろは決心した。文を書き、乙丸に託す。 彼はまひろと道長、ふたりを見守ってきた。正式に通わず、姫様を廃屋に呼び出して体を重ねるだけという道長に、11話では「もういいかげんにしてくださいませ!」と怒りの抗議をしたことすらある。 そして姫様は今夜、宣孝様を婿としてお迎えになる……。 百舌彦と同様、乙丸の胸にも様々な思いが押し寄せているのではないか。乙丸、まひろが子を産んだら感極まって泣いちゃいそうである。 そしてついに、まひろは宣孝を夫として迎え入れた。 ぜんぜん初々しくない初夜。しかし官能的な女の顔である。これまでの長い時間と経験が、まひろにこの表情をさせているのだ。吉高由里子、あっぱれな芝居だった。 初夜の翌日は予言通りの日食。「不吉の象徴である」……な、なにが不吉? ふたりの結婚? 次週予告。道長と倫子の長女・彰子(見上愛)登場! すごい、道長に似てる! 女院・詮子は元気になったみたいです。実資は二週連続で日記執筆。次回も帝と中宮はイチャイチャします。道長、閨閥政治に本気出す……愛娘をいけにえとする以上、本気を出さねばなるまいて。宣孝「お考えにはならないよ?」。女が男に灰をぶつける、『源氏物語』髭黒右大将・北の方エピソードは作者の経験からなのか? 26話も楽しみですね。 ******************* NHK大河ドラマ『光る君へ』 脚本:大石静 制作統括:内田ゆき、松園武大 演出:中島由貴、佐々木善春、中泉慧、黛りんたろう 出演:吉高由里子、柄本佑、黒木華、吉田羊、ユースケ・サンタマリア、佐々木蔵之介、岸谷五朗 他 プロデューサー:大越大士 音楽:冬野ユミ 語り:伊東敏恵アナウンサー *このレビューは、ドラマの設定(掲載時点の最新話まで)をもとに記述しています。 *******************