考察『光る君へ』25話 まひろ(吉高由里子)を娶ったとわざわざ報告する宣孝(佐々木蔵之介)、動揺を隠せない道長(柄本佑)
お宝をお使いなされ
安倍晴明(ユースケ・サンタマリア)が、道長にだけ伝える凶事の予言。 道長「地震か疫病か火事か日食か嵐か、はたまた大水か」 晴明「それら全てにございます」 天子の政が自然現象に影響すると考えられた時代だ。悪政を行えば天変地異を呼び、善政の下には瑞兆が現れるという。一条帝(塩野瑛久)にこの不吉を伝えなかったのは、言っても無駄だというのが理由だろう。 晴明「災いの根本を取り除かねば、何をやっても無駄にございます」「お宝をお使いなされませ」 災いの根本とは、帝の定子(高畑充希)への執着を指しているのか。女に夢中になっているのなら道長の掌中の宝で引き剥がせと……? その宝とは一体。来週以降、明らかになる。
定子の恐れ
晴明が見抜いていたとおり、一条帝は内裏を出て真昼間から職御曹司(しきのみぞうし)で中宮・定子と睦み合う。定子は再び政治的に追い込まれることを恐れ「私と脩子(ながこ)のそばに主上がいてくださるだけで十分でございます」と言うが、それが女のいじらしさと男の眼には映り、ますます愛おしさが募る。困ったもんだね! 男の気を引くための手練手管じゃないのだ、定子は孤立無援の恐ろしさを嫌というほど味わった後なのだから。 兄・伊周(三浦翔平)まで職御曹司に出入りしたら更にまずいと感じて断ろうとする定子、17話で先例を調べさせて伊周を内覧にしようと帝に働きかけたことといい、彼女は少なくとも兄よりは政治的センスがあるように思える。 ……と、意気揚々と職御曹司に乗り込んでくる伊周の顔を見ながら考えた。
気の毒な行成
晴明が予言した凶事のうち、日食と地震は防ぎようがない。大火も木造建築が密集した都で未然に防ぐのは難しいだろう。防疫もこの時代では同じく。そうなると、備えることができるのは大水……堤防の補修補強だ。 やれることがあるのなら一つでもやっておこうと、道長は鴨川の堤防補強工事に着手したいが、帝が内裏にいない。 この25話で一番気の毒な登場人物は、蔵人頭・行成(渡辺大知)だ。 堤防補強工事の勅許を得よという道長と、中宮とのイチャイチャを邪魔されたくない一条帝との板挟みで、右往左往させられた。 気の毒ではあるのだが、これが同じ蔵人頭だった実資(秋山竜次)であったらと想像する。昼も夜も職御曹司にいる帝から「無礼であるぞ」と叱責されて、彼なら「失礼つかまつりました」と引き下がったかどうか。帝が内裏に座し奉らず、政を疎かになさるなど前代未聞! と言い返したのではないか。行成の優しさが今回はマイナスに働いている。それを思うと、道長の行成への厳しい態度もわからなくはないのだ。