【甲子園】早実OB荒木大輔氏が見た大社対早実「気持ちがぶつかり合う激闘に胸が熱くなった」
高校生が心身ともにたくましくなる場
実は私自身の高校1年夏も、今回のチームと重なる部分がありました。優勝候補・北陽(大阪)との1回戦。試合前のシートノックを見た瞬間、1年生の私は、見たことがない強肩、フットワークの良さにカルチャーショックを受けました。とんでもないことになると、不安だらけだったのですが、当時の上級生がバックアップしてくれたんです。耐えて、耐えて初戦突破(6対0)。そこで、きっかけをつかんだチームは5試合を勝ち上がり、決勝まで進出することができました(横浜との決勝で敗退して準優勝)。 今でもなぜ、勝ち進めたのか不思議なんですが、和田明監督以下、結束力のある集団であったと思います。1年夏以降、3年夏まで計5回、甲子園に出場させていただきましたが、夏はすべて甲子園で終われたことは幸せなこと。指導者との信頼関係、仲間との絆、対戦した相手校との友情も芽生える場でした。決して突出した技術がなくても、チーム全体で一つの目標に向かえば、大きな力になる。今年のチームからも、感じることができました。 今夏は先発を含めて2年生以下のメンバーが多く、リーダーシップが抜群だった「二番・遊撃」の宇野真仁朗(3年)が残した「全員で戦う姿勢」を、後輩たちが秋の新チームに受け継いでくれることを期待しています。 高校3年夏から42年が経過し、私自身も還暦を迎えました。当時と音の響き、雰囲気がまったく変わらないのが阪神甲子園球場です。場内アナウンス、サイレン、観客のリアクションもそのまま。毎年、この真夏の時期になると私自身もワクワクする。時代の流れとともに休養日、タイブレーク、球数制限、クーリングタイム、新基準バットの導入、午前と夕方の二部制など大会の運営方法が変わってきています。高校球児の健康を守るための暑さ対策。こうした変化に対応していくことも、大事なことです。今夏は甲子園球場が誕生して100年。今後もあこがれの「聖地」であり、高校生が心身ともにたくましくなる場であり続けることを、心から願っています。 取材=岡本朋祐
週刊ベースボール