【甲子園】早実OB荒木大輔氏が見た大社対早実「気持ちがぶつかり合う激闘に胸が熱くなった」
野球解説者の荒木大輔氏(元ヤクルトほか)が8月17日、阪神甲子園球場に訪れた。早実時代は1年夏から3年夏まで5季連続甲子園出場し、通算12勝(5敗)を挙げた。開場から100年を迎えた「聖地」で母校・早実の試合を観戦。9年ぶりの準々決勝進出をかけた大社との3回戦を、評論してもらった。 【選手データ】荒木大輔 プロフィール・通算成績
素晴らしかった大社の一体感
【第106回全国高等学校野球選手権大会】 3回戦 8月17日 第4試合 大社(島根)3x-2早実(西東京) (延長11回タイブレーク) [荒木氏が見た準々決勝] 甲子園というのは、力を引き出してくれる場所。スタンドからの大歓声、後押しもあり、高校球児が人間として成長する場所であることを、あらためて感じた一戦でした。 両校の勝利へ向けた執念、気持ちと気持ちがぶつかり合う激闘に、胸が熱くなりました。まずはエース・馬庭優太投手をもり立てた、大社高校の一体感は素晴らしかったです。 1対1の7回表、味方中堅手の後逸により勝ち越しを許しましたが、引きずることなく、後続を抑えました。全員でミスをカバーして、9回裏にスクイズで同点。最後は11回裏、馬庭投手のサヨナラ打で死闘に決着がつきましたが、試合後、早実・和泉監督がコメントしていたように「魂」がにじみ出ていました。149球。エースしてマウンドを守るという気迫が、体全体から感じました。その背番号1の背中が、チームに勇気を与えたのです。 技術的にもコントールが安定しており、いつでもストライクが取れるのが強み。球場表示以上の体感速度があり、緩い変化球を巧みに操る。テークバックが小さいショートアームで、やや腕が遅れて出てくる。一つ間が入り、打者はタイミングを取るのが難しいように見受けられました。報徳学園、創成館、早実を制しての93年ぶりの8強進出。誰もが当たり前のように言いますが「気持ちで抑える」というピッチングの原点を見た気がします。 一方、早実の「粘り」も、見ごたえ十分でした。西東京大会では初戦(3回戦)から苦しみ、負ければ終わりという状況の中、スリリングな公式戦を重ねるごとに、チーム力が上がっていった印象があります。 甲子園でも相手に先制されても「耐える力」がついた。その象徴が2年生エース・中村心大投手です。鶴岡東との2回戦では延長10回、1対0でシャットアウト。大社との3回戦でも、攻守で我慢するスタイルが浸透し、地方大会とは別のチームに変貌を遂げました。 大社との9回裏。同点とされ、なおも一死二、三塁というサヨナラの絶体絶命のピンチ。早実・和泉実監督が決断した「内野5人シフト」は驚きました。「何が何でも、1点を防ぐ」という執念を見た。11回裏、最後は力尽きましたが、OBとしても後輩たちが頼もしく見え、誇らしいゲームでした。