投資家から評価される企業とは 「女性管理職比率が低い企業には投資しない」という判断が増える可能性も
「タレントマネジメント」と「ポジションマネジメント」を両輪で回すことが人事本来の役割
――人的資本経営を実践する上で、これからの企業や人事部門には何が求められるのでしょうか。 人的資本経営は、従業員の観点からはキャリアプランにつながり、投資家の視点からはサクセッションプランにつながります。いかにして人を育て、従業員の希望を実現し、将来の利益につなげていくか。その覚悟が求められていると思います。 この文脈ではタレントマネジメントの話題になることも多い。それも大切ですが、私はポジションマネジメントと両輪で回していくことが必要だと考えています。 ――ポジションマネジメントとはどういったものでしょうか。 戦略を実現するためにはどんなポジションが必要か、そのポジションにはどんなスキルが求められ、戦略実現のために何人必要なのか。こうした組織全体のあるべき姿をマネジメントすることです。 ポジションマネジメントは戦略と組織の一貫性が求められ、組織変革につながるため、難易度が高いです。このため、タレントマネジメントが先行してしまいがちなのですが、本来は同時に検討すべきです。 旧来のタレントマネジメント中心の人事部門は、新卒一括採用を前提とした日本の雇用慣行に縛られていたのかもしれません。グローバル化している先進企業ではポジションマネジメントを重視していますし、社内にリソースがなければ外から採用することが標準的になりつつあります。 経営陣からしてみれば、「マネジメントを担ってほしいのに、人事しかやっていない人事部」には不満があるかもしれませんね。人事に期待されていることは労務管理と育成だけではありません。期待されているのは、組織デザインを踏まえたポジションマネジメントであり、これは経営そのものです。 従来の「人事」から脱皮し、経営そのものを担う人事となる。それが従業員から見て魅力的であり、投資家からも評価される企業になるために欠かせません。人的資本への関心が高まっている今は、人事が新たな存在感を発揮するための絶好機なのです。 (取材:2024年8月8日)