投資家から評価される企業とは 「女性管理職比率が低い企業には投資しない」という判断が増える可能性も
投資家から高く評価される企業では、人的資本が「トップマター」となっている
――投資家に高く評価されている企業には、どのような特徴がありますか。 「人的資本についての語り手がCHROだけではない」ケースが多いですね。CFOも積極的に人的資本について発信しています。 海外の機関投資家が期待するCFOと、実際の日本企業のCFOの間にはギャップがあります。誤解を恐れずにいえば、日本企業のCFOは経理・財務の担当役員で、経営戦略や経営企画については担当していないことが少なくありません。企業によっては財務担当と経営企画担当の役員が別れているケースもあります。これに対して米国企業では、CFOが財務だけでなく、経営戦略についても責任をもちます。 CHROもCFOも大切な役割ですが、企業内でサイロ化している傾向があるのは問題ではないでしょうか。本来は業務範囲が明確に分割されることはないはずなのに、人事と経理・財務が分かれてしまい、それぞれで分業されています。社内コミュニケーションを統合し、経営陣がどの立場からでも人的資本を語れるようにするべきでしょう。 人的資本経営や人的資本開示の先進企業では、経営陣のコミュニケーションが統合されています。これらの企業の特徴を見ると、人的資本に責任を持っているのはCHROやCFOではなくCEO(最高経営責任者)です。担当役員の管掌ではなく、トップマターとして経営の本丸に位置づけていますね。「人」は経営にとって最も重要なだからこそ、人事だけではなく経営そのものの課題となります。 ――では、これからの人事はどんな役割を果たしていくべきなのでしょうか。 変革を成し遂げた日本企業、たとえばソニーや富士フイルムなどには共通して優れたCFOがいます。「優れたCFO」とは、財務担当役員であると同時に、事業を熟知していること。CHROにも同じことが求められるのではないでしょうか。 CFOに経営戦略や事業や人への深い造詣が求められるのと同様に、これからのCHROには、企業価値や経営戦略、そして事業に対する深い理解が求められます。こうした論点について、CHROが投資家と対話する機会もますます増えていくでしょう。