英フィンテックが欧州などで資金調達額の6割に 格安の手数料と社会課題の解決で躍進 藤好陽太郎
また同社は25年11月にも、日本国内の銀行間送金網「全銀システム」に参画する。金融・事業拡大のグローバル責任者、ダイアナ・アヴィラ氏は「(安い手数料を武器に)世界全体の個人の送金取引に占めるワイズのシェアを現在の5%から95%に飛躍させたい」と高い目標を掲げる。 ◇エッコ CO₂をアプリで表示 エッコは、商品の生産から廃棄までのCO₂排出量を示すカーボンフットプリント(炭素の足跡)を明示するアプリを作っている。購入額の平均0.5~1%を支払い、植樹などを通じて、同じ量のCO₂を吸収する。エッコは商品のCO₂排出量を調査する企業、植樹などを委託する組織、英豪独などの決済企業との提携を進めており、英国外でもアプリの利用者が増えている。 現在のアプリは飲食の店舗や小売り店舗ごとの平均排出量の提示にとどまるが、今後商品ごとの排出量を明示し、消費行動に直接影響を与えたい考えだ。 ◇スーパーフィ 多重債務者の支援アプリ スーパーフィはインフレで生活苦にあえぐ多重債務者らを救済するため、複数の銀行からの借入総額や返済期日を知らせたり、受け取れるはずの行政の給付金を知らせたりするアプリを作った。同社の対象となる層の7割が、月約8万円もの政府などの給付金を受け取る手続きを取っていないという。「オープンバンキング」を活用することでアプリを実現させたが、ローン地獄からの早期退出で注目を集めている。 ◇育っても米株式市場に上場 消費者保護も課題 英国のフィンテック企業は約3000社に上るが、課題も多い。英国でせっかくスタートアップが育っても、英半導体設計大手アームのように上場先として米株式市場を選ぶケースが目立つのだ。 また英国では詐欺やマネーロンダリング(資金洗浄)など金融犯罪が後を絶たない。英国の規制当局は犯罪管理が甘かったとして24年10月、スターリング銀行に約50億円の罰金を科した。レボリュートも日本の金融当局から業務改善命令を受けたことがあり、現在社員1万人のうち、4000人を金融犯罪の対策にあてている。
英バークレイズ銀行の元取締役で資産運用コンサルタントのロブ・コリガン氏は「フィンテックのような先端企業が英国で発展するためには、年金基金などをより多く投資に向かわせ、ロンドンに上場させる必要がある。同時に金融当局と金融機関、消費者が連携して金融犯罪を防ぐことが不可欠だ」と強調する。 英フィンテック業界は消費者保護という課題を抱えつつも、従来の金融業界を脅かす存在に急成長しており、目が離せない。 (藤好陽太郎〈ふじよし・ようたろう〉追手門学院大学教授)