東大の大学院でサッカー研究 挫折から転身…社会人クラブに新風「必ずJFL昇格を成し遂げたい」【インタビュー】
テクニカルスタッフを始めたきっかけ「学業への意欲とサッカーへの知的好奇心を両立」
ベルギー1部シント=トロイデンとの提携など、データ分析チーム(以下、テクニカルユニット)を中心に先進的な取り組みでたびたび話題を呼ぶ東京大学運動会ア式蹴球部(体育会サッカー部。以下、東大ア式蹴球部)。そんな東大ア式蹴球部の先進的な取り組みは、社会人サッカーにも影響を及ぼそうとしている。 【動画】「三笘を超える逸材?」 大学生20歳MF“無双ドリブル”驚愕テクニック披露の瞬間 そのチームのうちの1つが関東1部に所属するエリース東京FCだ。エリース東京FCは昨年関東2部から1部昇格を果たし、今シーズンは10月に行われた全国社会人サッカー選手権大会で関東勢最高位となるベスト8進出を果たすなど、近年成長を遂げているクラブである。そんなエリース東京FCの成長を支えるのが東大ア式蹴球部テクニカルユニットOBの木下慶悟さん(大学院2年)。木下さんはテクニカルコーチとして2023シーズンからエリース東京FCに加入し、チームの躍進の一因となってきた。また生粋のマドリディスタとして、分析記事を各種媒体に度々寄稿するなど、活動の幅は多岐にわたる。 テクニカルコーチとして社会人サッカーに加入したきっかけとはなんだったのか。そして木下さんの社会人サッカーに対する思いとはなんなのか。インタビューを行った。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部) ◇ ◇ ◇ 木下さんは2019年に東京大学に入学し、東大ア式蹴球部へ入部。当初は選手として入部をしたが、大学2年生になるタイミングでテクニカルスタッフへの転身を決めた。 「東大には2年生の時に3、4年でどの学部に行くのかを決める進振り(進学振り分け制度)という制度があるのですが、進振りについて考えるうちにデータサイエンス的な学問に興味が出てきました。その時、自分は怪我が重なっていたことや実力が通用しないことに挫折し、部活を辞めて学業に専念しようかと思っていたのですが、どうしてもサッカーへの情熱を消し去ることができず、複雑なサッカーというスポーツをもっと知りたいという知的好奇心とデータサイエンスを学ぶ意欲を両立できる場所はないかと考えた結果、ア式蹴球部のテクニカルスタッフに転向しようと思いました。 テクニカルユニットでは、基本的に試合前、試合中、試合後の3つの業務をサイクルとして回していました。試合前には相手校の分析・スカウティングを行い最適な戦い方を指導陣や選手に提示し、試合中にはリアルタイム分析で試合の状況をリアルタイムで把握しながらチームの戦術を修正し、試合後には試合を振り返ってフィードバックを行います。こうした3つの業務を軸にしながらも、ほかのテクニカルユニットのメンバーと協力して膨大なデータをパスマップやヒートマップのような目で見て分かる形に、分かりやすく変換するシステムの開発など、データ活用にも取り組んでいました」