東大の大学院でサッカー研究 挫折から転身…社会人クラブに新風「必ずJFL昇格を成し遂げたい」【インタビュー】
テクニカルコーチとしてエリース東京FCを活性化…「分析特化」の強み発揮
そんな木下さんは部活の引退後、エリース東京FCに加入することになるが、それには元ア式蹴球部の監督で現在エリース東京FCの監督を務める山口遼氏の存在が大きかったという。 「もちろんア式にいる時から遼さんとは関わりがあったというのと、指導者としてのサッカーの見方や執筆した記事の内容などについて何回か相談に乗っていただいた関係で、私が部活を引退したタイミングにエリースへと誘っていただいたのがきっかけです。私は大学院での研究テーマも『チームの配置や選手のポジショニングの良し悪しを定量化する』というサッカーに関するもので、大学院生になって研究に専念する人が多いなかで、研究と現場の両方を経験できる機会は貴重だと思い、エリース東京FCへの加入を決めました。部活を引退してからもサッカーへの情熱が冷めることはなく、定性的にも定量的にも、もっともっとサッカーへの理解を深めていきたいと思っていた自分にとって、ぴったりな機会でした」 そうして加入したエリース東京FCで、木下さんはテクニカルコーチとして存在感を発揮。チームは年を経るごとに大きな成長が見られるという。 「エリースではテクニカルコーチという役職で、東大ア式蹴球部の頃よりも現場に近い、選手との距離が近い立場としてチームに関わっています。東大でやっていたような3つの主業務(試合前スカウティング、試合中リアルタイム分析、試合後フィードバック)も引き続き行っていて、分析に関するものは自分ともう1人のテクニカルコーチですべて担当している感じです。社会人チームでは、そもそもテクニカルコーチ自体がいないクラブやほかのコーチが分析の役割を兼任しているクラブも多いなかで、大学生の時から分析に特化してきた人材がテクニカルコーチとして在籍しているというのは、チームの強みの1つかなと感じます。 テクニカルコーチという仕事は多くの人が想像するよりも泥臭くて、動画の撮影やアップロード、切り抜きなど雑務も多いです。ですが、選手にとってみればその動画の見やすさがプレーの振り返りの質やモチベーションに直結しますし、そういった泥臭い仕事を愚直に、真面目に、高い質でできるかがとても重要で、そうした意味でも東大生というのはテクニカルコーチにマッチしているのかなと思います。例えば、僕がエリースに加入してからは、お手本になるような選手のプレーをコツコツ自分で保管するようにしていて、今では1000を超える膨大な数の動画がストックしてあります。選手から何か質問されたり要望を受けたりした時にも、動画という形でお手本や解決策を提示でき、選手たちの理解度もグッと上がったなと感じます。選手が元々持っている技術レベルや能力は十分に高いので、そこに戦術を浸透させていくことで、チームとして着実に成長できていけると感じています」