アイス輪切りレモン、皮まで食べる? 国産にできない? メーカーに聞いた
メーカーの希望に産地は
国内産地はこれらに対応することはできるのか。レモン栽培が盛んな広島県農業技術センター果樹研究部に問い合わせた。 まずは価格。2023年の東京都中央卸売市場によると、米国産レモンは1キロ当たり平均393円。広島産は同512円で、119円の差がある。国内産の端境期に当たる7月は、広島産の価格は米国産の3倍にまで上がる。 同研究部は「現在の生産規模で価格水準が外国産並みになれば、農家は収益を確保するのが難しい」と指摘。「生産量を増やせば、外国産の価格に近づけても収益が確保できるかもしれない。だが、人手や農地の確保など課題がある」と話す。 次に、製造期1~8月の出荷。国産レモンの収穫期は10月から翌年3月ごろ。PB商品の仕入れは産地の収穫期に合わせ、期間は限られている。米国産やチリ産などを使っているのは価格面だけでなく、1~8月の長期間にわたって調達できる点も大きいという。 同研究部は、1~8月出荷は「技術的に可能だが、現実的ではない」とみる。露地栽培とハウス栽培の組み合わせで出荷はできるが、ハウス栽培は「設置費用と燃料代がかかる」として、コストに見合った価格が維持できなれば導入を広げるのは難しいとみる。 最後は、皮が固く円柱のような形状について。アイスに使うレモンは一定の厚さで輪切りにする。切る際につぶれない硬さがあり、端まで切ってもサイズが一定に保てる形状が好ましいという。 同研究部は「円柱のような形状の品種はない」としつつ「皮を硬くすることは可能」と話す。「結果枝か側枝が太いと皮が厚くなる傾向がある」として、せん定次第で、皮は硬くできるという。 一連の説明を踏まえ、同研究部は同社が挙げる3点について「国内産地がどこまで応えられるかは未知数」とした。気候や生産規模の異なる外国産との競合はハードルも高いという。 一方、同社によるとPB商品の販売量は伸びていて、「国産への可能性は感じている」(小野部長)。同社は輸入レモンを使う通常品ではなく、PB商品のような限定品での国産利用を有望視する。 フタバ食品と同様に、輪切りレモンが入っているシャーベットアイス「シャビィ 濃厚レモン」を製造する赤城乳業(埼玉県深谷市)にも取材を申し込んだが、「レモン原料の調達や原産地に関する件は差し控えたい」との回答だった。 (高内杏奈)
日本農業新聞