「ネット銀行経済圏」 中小企業に浸透、取引社数は1万社突破 メイン取引の最多社数は「楽天銀行」
「PayPay銀行」が楽天銀行に次いでメイン取引1千社を突破
実店舗を持たず、インターネットバンキングなど個人向け金融事業を主力とする「ネット銀行(新形態の銀行)」が中小企業にも浸透してきた。他業態に比べ大幅なシェア拡大が続くネット銀行のメインバンクシェアは、2024年で0.28%(前年比+0.06pt)、社数で4197社を数えた。調査を開始した2009年からは社数で約27倍、10年前(2014年)からは同5.4倍に増加した。 ネット銀行では楽天グループの「楽天銀行」が1368社・シェア0.09%でトップとなり、ソフトバンクグループの「PayPay銀行」、三井住友信託銀行とSBIホールディングスが共同出資する「住信SBIネット銀行」、「GMOあおぞらネット銀行」の上位4行でネット銀全体の約99%を占めた。特に「PayPay銀行」は、ネット銀行としては「楽天銀行」に次いで2番目にメイン社数で1千社を超えた。決済手数料や基本利用料の低さを背景に、多額の融資を必要とせず、決済手段として法人口座が必要な零細企業を中心に、ネット銀行の口座開設を進める動きが加速したとみられる。 サブバンクとして法人口座を開設するなど、ネット銀行を取引行とする中小企業も増えている。主要なネット銀行10行 を、メイン・サブバンクの立ち位置を問わずいずれかの取引金融機関として利用する企業は、2024年調査時点で1万3209社判明した。帝国データバンクがデータを保有する全国約147万社のうち、約1%がネット銀行と取引がある計算になる。10年前の2014年時点では3000社に満たなかったものの、対面営業の自粛を余儀なくされたコロナ禍以降は法人でもネットバンキングの利用機会が増加し、2023年には1万社を突破した。
「ネット銀行と取引」の半数、設立10年未満の「新興企業」
近時は、従来の財務諸表に基づく審査をスキップした人工知能による融資サービスなども取り入れ、特に大手銀行などで融資などの資金調達が難しいスタートアップなど新興企業の取り込みも進む。実際に、ネット銀行と取引を行う企業1万3209社のうち、設立10年未満(2015-24年設立)の企業は51.06%・6744社、設立3年未満でも10.69%・1412社を占めるなど、業歴の浅い新興企業の占める割合が大きかった。 ネット銀行と取引のある企業のうち、最も多いのは「楽天銀行」(5400社)でネット銀全体の4割超を占めたほか、「PayPay銀行」(4319社)、「住信SBIネット銀行」(2552社)、「GMOあおぞらネット銀行」(1688社)の上位4行が取引社数で1千社を超えた。 各行では、自社の証券業務や振込手数料の無料・格安化、デジタル給与サービスの提供など多様な金融サービスで顧客の囲い込みを図っており、水面下で中小企業や新興企業における「ネット銀行経済圏」の拡大が続いている。