大失速の日産「ゴーンの呪い」いまだ抜け出せず? V字回復に向けた急務とは
求心力がない状態で、複雑な問題への対応を迫られた
今回の決算を受け、大失速の理由に言及した日本経済新聞の記事では、日産の企業風土を問題視する記述が目を引きました。 「ゴーン時代から払拭(ふっしょく)できない経営風土」として、幹部社員が「指示待ち」をし、モノいわぬ習慣があるというのです。ゴーン氏は1999年、就任直後から「リバイバルプラン」に着手して圧倒的なトップダウン経営で改革を押し進め、成果を挙げてきました。絶対的なトップとなった氏は、その後の経営安定期も独断で物事を進めて、多くの指示待ち幹部を生み出しました。そしてその時代の幹部たちが、いまだに残っていることが、風土を変えられない原因だというのです。 しかし、問題は単にゴーン時代をひきずる幹部社員たちの指示待ち風土だけではありません。ゴーン氏退場以降の、経営体制の安定感欠如も大きく関係していると見ています。 2018年にゴーン氏の不祥事(金融商品取引法違反容疑)が発覚、逮捕・解任となりました。その後を受けたゴーン時代のナンバーツーである西川廣人氏に2019年、不当に多くの報酬を得ていた疑惑が浮上し、事態を収拾すべく辞任を余儀なくされました。現在の内田社長は、この混乱の収拾役として専務から急遽の登板となり、安定感欠如の問題はここから始まっています。 内田社長が商社出身ということもあってか、体制当初は提携先であるルノー出身のアシュワニ・グプタCOOおよび生え抜きで技術畑の関潤・副COOとの三頭体制でしたが、関氏が就任からわずか1カ月で日本電産の永守重信CEOに引き抜かれるという事態が発生。その後も副社長やCQO(最高品質責任者)らが相次いで退任するなど、経営体制に安定感を欠く状況が続き、内田社長の求心力に疑問符が付く状況が露呈しました。 さらに2023年は、社長との確執がささやかれたグプタCOOも辞任。このような安定感を欠く経営体制が、事業戦略を推し進める上で障害になったことは間違いないでしょう。 EVを巡る100年に一度とされる業界の大変革期に、このような不安定な体制下で、ゴーン氏退任後のルノーとの提携内容見直しや資本関係の綱引きなどの対応を迫られたのは、かなり危機的状況だったといえます。結果としてルノーの支配下を抜け出したものの、これまでルノー傘下の経営が長く続いていました。 それにより、常にルノーの顔色うかがいをしつつ戦略を決定する流れが定着していたことは、経営のスピード感を失わせる一因になったといえそうです。未解決で残されたルノー絡みのいざこざもまた、ゴーン氏が残した負の遺産といえるでしょう。