日本初、飛騨市「全小中学校に作業療法士」の理由 診断がなく相談先がない子たちにも支援が届く
知られざる「作業療法士」の仕事とは?
岐阜県最北端に位置する飛騨市。人口約2万2000人の同市が始めた全国初の取り組みが今、注目を集めている。それは市内の公立小中学校すべてに、「作業療法士」が訪問してさまざまな支援を行うというもの。モデル校での試行で成果が見られたため、全校展開に発展したという。この取り組みに関わる飛騨市のキーマンとプレイヤーに話を聞いた。 【写真】学校作業療法士が個別相談を行う学校作業療法室 国家資格である「作業療法士」について、具体的にどのような仕事を担っている専門職なのかよく知らないという人も多いかもしれない。 「作業療法士(Occupational Therapist:以下、OT)は、精神疾患のある人の地域生活を支援するため、アメリカで生まれた職業です。その後、第二次世界大戦後、戦争での傷病者のリハビリで医療的な役割を担うようになりましたが、そもそもOTの仕事のベースは、生活支援なのです。医療のように障害や疾病の改善に着目するのではなく、その人が意思を持って行う作業や活動の充実を目指し、具体的な手段を考えたりトレーニングや環境調整を行ったりします。そのため、身体だけでなく、心理学や社会学など幅広い知識やスキルを基に対応します」 そう説明するのは、飛騨市で学校作業療法士(以下、学校OT)として支援に当たっているNPO法人はびりすの奥津光佳氏である。 飛騨市はこれまで、乳幼児期から老年期に至るまですべての年代の困り事に対し、医療と福祉のさまざまな専門家が関わって支援する体制の構築に尽力してきた。OTも、そうした中で活躍してきた専門職の1つだ。 年々、発達に特性がある子や学習面での困り事がある子などが増え、学校との連携の必要性が高まったため、都竹淳也市長のリーダーシップの下、2022年度からOTを学校現場で活用することになったという。 モデル校での試行で成果が見られたことから、翌年には市内の全小中学校(小学校6校と中学校3校)に学校OTが月1回~年数回(各校による)訪問する体制に変更。さらに2024年度は、訪問を月2回に増やし、訪問の際は各校に学校作業療法室を設置する形でさまざまな支援を行っている。