気象庁が異常気象分析検討会を開催、7月豪雨や酷暑は「異常気象の連鎖」
広島、岡山、愛媛県など西日本を中心に甚大な被害を出し、平成最悪の豪雨災害となった「平成30年7月豪雨」。そして、埼玉県熊谷市で国内の統計開始以来の最高気温を更新する41.1度を観測した記録的な高温となり、熱中症による搬送者が多数発生した。こうした今年7月の顕著な気象状況について、専門家でつくる気象庁の異常気象分析検討会(会長=中村尚・東京大先端科学技術研究センター教授)は10日、「異常気象の連鎖だった」との見解を示した。
異常気象分析検討会は2007年6月から気象庁が運用を始めた組織。猛暑や豪雪など、社会経済などに大きな影響を与える極端な気象現象が発生した場合に、大学や研究機関の専門家たちが集まって、発生の原因について分析や検討を行っている。今回は平成30年7月豪雨や、西日本と東日本で7月中旬以降に顕著な高温となり、大きな影響が出ていることを受けて、臨時会が開かれた。臨時会が開かれるのは、広島市で大きな土砂災害が発生した2014年8月の気象状況について検討した時以来で、約4年ぶりとなる。
検討会は、平成30年7月豪雨の原因について「西日本付近に停滞した梅雨前線に向けて、極めて多量の水蒸気が流れ込み続けたこと」をあげ、記録的な高温の原因については「太平洋高気圧とチベット高気圧がともに日本付近に張り出し続けたこと」と指摘。いずれも「シルクロードテレコネクション(シルクロードパターン)」と呼ばれる偏西風の大きな蛇行が繰り返されたことで引き起こされたという。 中村会長は記者会見で、「豪雨と高温だけでなく、6月下旬に関東甲信で過去最も早く梅雨明けしたこと、梅雨のない北海道で豪雨災害が発生したこと、台風が日本列島付近を東から西に進むというかつてない動きをしたことを含めて、一連の現象は次々とお互いが関連して発生した異常気象の連鎖だったと考えられる」と説明した。 また、こうした背景には地球温暖化に伴う気温の上昇と水蒸気量の増加などもあると考えられる。中村会長は「気温が1度上がれば、空気中に含まれる水蒸気量は7%増加する。温暖化の傾向は明らかなので、今後もこのような顕著な豪雨が発生することは覚悟したほうがいい。備えることがますます必要になってくる」と話した。 飯田和樹 ライター/ジャーナリスト(自然災害・防災)