ダメな医師ほど患者の話を聞かない…心臓手術の名医が「勉強熱心な患者を迷惑がる医師は三流」というワケ
いただいたメールはすべてに目を通し、よほどの事情がない限りはすぐに返信するようにしていますが、ときに深刻な場合は相談相手から検査結果や経過を聞き、必要な場合には当院で手術を行っていただくことも幾度となくありました。 たくさんの方とやり取りをしてみて思うのは、私のところに相談をしてくださる方は、自分の病状や治療法を本当によく調べている、ということです。 それは決して悪いことではなく、むしろ非常にプラスです。 こういった心配をされる患者さんがよくいらっしゃると聞きます。 「先生にあまりあれこれ聞きすぎると嫌な顔をされないだろうか」 「医者でもない自分が、治療法について疑問を投げかけるのはおこがましいのではないか」 これらは私から言わせていただくと、気にする必要はまったくありません。 ■「お医者さんにすべて任せましょう」はもう古い 私のもとに相談に来られる方のなかには、論文まで読み込んで、「だから先生の手術を受けたいんです」と言って来られる方もいらっしゃいます。 もちろんみなさん全員がそうする必要はありませんが、診断を下した医者から言われた治療法だけがすべてではありません。 インターネットの検索画面にキーワードを打ち込めば、関連する項目が無数に出てくる時代において、ひとりの医者の言葉を妄信することなく、自ら治療法の選択肢を広げていくことが大切です。 そのときに、情報の波に飲まれそうになったら、心臓に関しては私にメール相談をしてくださったらいいと思います。 治療法だけでなく、予後に関しても調べておくことを勧めます。どんな手術を受けたかによって、回復や退院するまでの日数は大きく変わります。とくに、早く復帰しなければいけない状況にある方にとって、どれくらいで歩けるようになり、退院できるのかは、これまでの生活を維持していくうえでも大切なことでしょう。 私の友人で肺がんの手術を行っている外科医がいます。彼の手術を受けた患者さんは、手術終了1時間半後には歩けて、水を飲んで吐き戻しがなければ昼ご飯が出ます。しかも、80歳の高齢者であろうと関係ありません。そして、翌日には退院できるそうです。 このような患者さんの予後にまで気を配れるすばらしい医者は、調べることで出会える可能性が広がります。はじめから「お医者さんにすべて任せましょう」という考えは、もう古いと言えるでしょう。 誰に自分の命を託すのか。まずご自身の手で調べることがQOL(生活の質)の向上にもつながるのです。 ---------- 渡邊 剛(わたなべ・ごう) 心臓血管外科医 1958年、東京都生まれ。心臓血管外科医、ロボット外科医(da Vinci Pilot)、医学博士。日本ロボット外科学会理事長、日伯研究者協会副会長。麻布学園高等学校卒業後、医師を志す。金沢大学医学部卒業後、金沢大学第一外科に入局する。海外で活躍する心臓外科医になりたいという夢を叶えるためドイツ学術交流会(DAAD)奨学生としてドイツHannover医科大学に留学。金沢大学心肺・総合外科教授、国際医療福祉大学三田病院客員教授などを経て、2014年にニューハート・ワタナベ国際病院を開院。著書に『医者になる人に知っておいてほしいこと』(PHP新書)などがある。 ----------
心臓血管外科医 渡邊 剛