印象派150周年記念、オルセー美術館で『パリ1874年』展。
今年は印象派150周年ということでフランス各地でさまざまな展覧会が開催されている。ひとつの芸術運動について明快に始まり、年を示せるのが印象派のおもしろいところだろう。150年前、つまり1874年に印象派という言葉が生まれることになったのは、写真家ナダールのスタジオの2フロアを会場に、その年の4月15日から1カ月間開催された30名の画家たちによる『画家、彫刻家、版画家などによる共同出資会社』展においてのこと。一種のグループ展である。展示されていたのは当時潮流だったアカデミックな絵画と一線を画す日常や屋外の光景などを描いた作品で、その中にクロード・モネの『印象・日の出』(1872年)があった。そこから芸術評論家のひとりがいささか嘲笑を込めて風刺新聞の記事で、この展覧会を"印象派の展覧会"と表現。これがきっかけとなって印象派という呼び方が生まれたのである。
自主的に展覧会を催して"蜂起"したクロード・モネ、ピエール=オーギュスト・ルノワール、カミーユ・ピサロ、ベルト・モリゾ......。いまでこそ高い評価を得て世界中の人々に愛されている画家たちだが、1874年において傑作とされていたのはフランスの王立絵画彫刻アカデミー主宰による公式美術展覧会(官展/サロン)に出品される宗教や歴史を主題とした作品である。オルセー美術館で7月14日まで開催中の『印象派を創成する』展では、1874年の展覧会での印象派たちの作品を見せると同時に、同じ年に開催された官展に出品されたアカデミックな作品も展示。その時代にこれこそが絵画とされた作品を前にすると、日常や屋外の光景などを主題に"見るものを自分たちが見るように"描く印象派たちの作品は全く趣を異にしていたことが理解しやすい。
1874年の印象派展を再現するセクション1に展示されているピエール=オーギュスト・ルノワールの作品。左は『La Danseuse』(1874年)、右は『La Dame en bleue』。photo: Mariko Omura