「カズの息子」という呪縛の先へ。親の力をプラスに換えて、三浦孝太19歳の挑戦
父の勧めで合宿生活も、ふたりの「師」とRIZINへ
RIZIN出場を、両親は当初反対していた。 「お父さんは『自分でやると決めたのなら頑張れ!』って感じでした。お母さんは、心配もあったみたいです。格闘技の世界はヤンキーや不良がやっているイメージがあるみたいで、『ケンカもしたことのないアンタがやっても大丈夫なの?』って(苦笑)。それでもRIZINや総合格闘技のビデオを見てもらい、話をしていくなかで理解してくれて、いまでは完全に応援してくれています」 高校2年のときにヘルニアを患い、約半年間、激しい運動ができない時期があった。そのリハビリの際に出会ったのがシドニー五輪レスリング63キロ級代表で元総合格闘家の宮田和幸だ。卒業後は師と仰ぎ、宮田が運営する総合格闘技ジム「BRAVE」に入門した。打撃に関しては、天才キックボクサーの那須川天心の恩師としても知られる葛西裕一の主催するジム「GLOVES」でトレーニングを積んできた。
2021年春から夏にかけては約3カ月間、三郷にあるBRAVEの寮で宮田の内弟子たちと寝食をともにし、厳しい合宿生活も経験。それを勧めたのは、父であるカズだったという。 「ずっと実家暮らしだった僕にとっては、初めて親のいない生活でもありました。どちらかといえば自分は恵まれた環境で育ってきましたが、周りの人は地方から出てきて寮でハングリーにやっている。最初はレベルの差もあって、練習で一方的にやられて帰ることも多かったですし、共同生活のなか息抜きがまったくできずにキツいと思ったこともありました。 自宅では、練習が辛くても食事のときには両親やお兄ちゃん(5歳上で俳優)と話すことでリラックスできていたのですが、それもできず。食事だって、誰も作ってくれないわけですから。ただ、そういう経験をしたことで改めて自分の置かれた環境に感謝するようになりましたし、本当に行ってよかったと思っています」
あくまでも「親の力」はプラスに
親ガチャ――。最近は、そんな言葉が若者の間で流行している。 簡単にいえば、どんな親のもとに生まれるかで子どもの人生が決まってしまうということだ。 父がサッカー界のスーパースターであるカズ、母がモデルでタレントの設楽りさ子。経済的にも恵まれ、運動能力や容姿まで引き継いでいるとすれば、三浦孝太は親ガチャで誰もが羨む「大当たり」を引いたといえるのかもしれない。 「ウチは何をしても目立ってしまう家庭でしたが、もう慣れましたし、その環境をプラスにとらえるかマイナスにとらえるかは自分次第じゃないですか。今回のRIZIN出場にしてもそうですが、何かあると『親の力』と言われてしまいますけど、逆にお父さんのおかげで憧れだったネイマールにも会えましたし、格闘技をやる上でも宮田さんや葛西さんらその世界でトップの方々に教えてもらえるなど普通の人が簡単にはできないことをやらせてもらっている。 サッカーをやっていたときはちょっと嫌でした。たとえば試合をしていると、相手チームの選手がこそこそと『○番がカズの息子だって』と話しているのが聞こえてきましたし、お父さんと比べられたことも。仕方のないことだとは理解していますが、小さい頃はそれで凹むこともありました。でも、それを言って家のなかが変な雰囲気になるのも嫌で、両親に言うことはなかったですね。たまにお兄ちゃんに『また言われた』って愚痴るくらいで(苦笑)」