JPモルガン、ビットコインに対して慎重姿勢を維持──前向きな材料はほぼ織り込み済み
大手銀行のJPモルガン(JPMorgan)は、ビットコイン(BTC)と暗号資産(仮想通貨)市場全体を牽引する可能性のある材料はほぼ織り込まれていると述べた。
2022年以来の最大の下落
デジタル資産市場では今週、2022年に起きた暗号資産取引所FTXの崩壊以来で最大の下落が発生。これは主に伝統的市場から波及したもので、ビットコインは15%以上下落した後にやや反発したとJPモルガンのアナリストらは指摘した。暗号資産市場の売りは主に個人投資家によるものだったが、モメンタムトレーダーもロングポジションを決済し、ショートポジションを建てることで下落の一因になったとアナリストらは述べた。 今回の急速な調整は、日本銀行が先週行った基準金利の引き上げが、円高と「キャリートレード」の解消につながったことで始まった。キャリートレードとは、トレーダーが低金利の円で資金を借り入れ、より利回りの高い資産への投機に使う戦略だ。それ以来、伝統的資産市場とデジタル資産市場はどちらも安定しているが、多くのトレーダーは依然として懸念を抱いている。
先物市場でリスク回避は見られず
一方、ビットコイン先物市場では機関投資家による「リスク回避」はほとんど見られず、未決済建玉は限られており、現物価格とのスプレッドは横ばいとなっているとアナリストらは指摘した。 JPモルガンのチームは、モルガン・スタンレー(Morgan Stanley)のウェルスアドバイザーが顧客に暗号資産を提供していること、破産企業からの返済がほぼ終了していること、アメリカの両政党が有利な規制を示唆していることなど、機関投資家がビットコインと暗号資産セクターに楽観的であり続けるための材料はほとんどないと指摘した。 しかし、こうした前向きな材料は、デジタル資産の現在価格にすでに織り込まれているようだと同行は述べ、「シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)のビットコイン先物市場でのリスク回避は限定的であり、株式市場は依然として脆弱に見える。(中略)最近の調整にもかかわらず、暗号資産市場に対しては引き続き慎重な姿勢を維持する」と結論付けた。 JPモルガンの慎重なコメントは目新しいものではなく、同行は最近、ビットコイン価格が生産コストや金に対して依然として高すぎるため、短期的な暗号資産市場の回復は短命に終わる可能性が高いと述べている。 同行のアナリストらは現在、ビットコインマイニングの平均生産コストは約4万9000ドル(約710万5000円、1ドル145円換算)と推定している。この水準を下回る価格変動はマイナーに圧力をかけ、ビットコイン価格をさらに圧迫することになる。 |翻訳・編集:林理南|画像:Shutterstock|原文:JPMorgan Remains Cautious on Bitcoin as Positive Catalysts Mostly Priced-In
CoinDesk Japan 編集部