「私が関心を持つのは“危機に陥った人”」映画『ソウルの春』キム・ソンス監督が気が付いた1980年代の“思い込み”
政治的な作品は若者からは受けない?
韓国で昨年11月に公開され、1300万人の観客動員を記録した映画『ソウルの春』。この作品は、1979年10月26日に、独裁者とも言われた朴正煕大統領が、自らの側近に暗殺された出来事から始まる。韓国ではここ10年程の間、近現代史を元にした映画が続々と作られているが、1979年の大統領暗殺を元に作られたのが映画『KCIA 南山の部長たち』であり、『ソウルの春』はその直後のことがフィクションを交えながら描かれているのだ。 【画像】キム・ソンス監督 前半のインタビューでは、自身の映画『ソウルの春』が、韓国でコロナ禍以降最大のヒットとなる1300万人を動員した理由について、「はっきりとはわかっていない」と答えていたキム・ソンス監督だったが、韓国映画の変化について聞き終わったタイミングで、何かを思い出したのか、「この映画が1300万人のヒットとなった理由について、補足させてほしい」と監督自らが提案する瞬間があった。 「私は80年代後半に映画界に入り、1990年公開の『追われし者の挽歌』(原題:『그들도 우리처럼(彼らも私達のように)』)というパク・クァンス監督の映画で脚本家としてデビューすることとなりました。この作品は、炭鉱の町に身を隠す学生運動の若い活動家たちを描いた物語で、当時は海外の映画祭でも評価されました。 こういった作品に関わったときに、映画界の多くの方からは、『政治的な作品というのは、20代、30代の政治に関心のない若者からは受けないだろう』とか、『女性は、女性が主人公の物語だったり、ラブストーリーやコメディに惹かれるものだから、そういうものを作らないと受けないだろう』と言われました。 私の中には、そのときの記憶がずっとあったんですが、今回の『ソウルの春』に対する観客の反応を見て、当時、私が言われていたことは実は間違っていたのではないかと思うに至りました。20代30代の女性というのは『政治に関心がない』と思われていましたが、実際には思っている以上に政治に関心があり、正義感を強く抱いていて、政治はこうあるべきだという考えも持っている人が多いということに気付きました。