「私が関心を持つのは“危機に陥った人”」映画『ソウルの春』キム・ソンス監督が気が付いた1980年代の“思い込み”
光が当たらない人にカメラを向けたい
確かにキム・ソンス監督の映画を見ていると、何かを克服し、成功した歓びに沸く瞬間を描くよりも、何かを叶えられなかったむなしさや哀しさ、そしてどうにも抑えられない強い憤りを描いていることが多いように思う。 『アシュラ』や『ソウルの春』を見ても、見終わった後に、いつまでも消えない重い感情が残るのは、このような監督の関心があってこそなのだろう。 「人は皆成功を望むし、欲望を実現したがるものなんですが、映画監督としては、成功した人や、勝利者を表現するよりは、やはりちょっと落ちぶれた人だったり、マイナーな存在だったり、もしくは何かに敗北してしまった人だったりという、光が当たらない人にカメラを向けるということをしたいんです。それが『公平』であるとも感じているんです。現実でも成功している人は光が十分に当たっているので、そんな人たちを映画にして、また光を当てるということを、ちょっと不公平だと思ってしまうんです」
西森路代