選択的夫婦別姓も議題に? 17日に国連・女性差別撤廃委の対日審査
■女性差別について個人が国連に訴える制度を導入するか?
もう一つの注目は、女性差別を受けた個人が、国内での手続きが尽くされても救済されない場合に、国連の女性差別撤廃委員会に通報できる制度を定めた「選択議定書」を、日本が批准していない点です。(条約の締結国189か国のうち、115か国が締結)日本政府は報告の中で「各方面から寄せられる意見も踏まえつつ、制度の受け入れの是非につき、真剣に検討を進めていく」としつつも「個人通報制度の受け入れにあたっては、我が国の司法制度や立法政策との関連での問題の有無や同制度を受け入れる場合の実施体制等の検討課題があると認識している」と述べていて、この主張を繰り返すのか注目されます。
■法律が改正された例も
前述したように、前回の2016年に勧告された複数のテーマのうち、結婚できる年齢が男女で違うこと(男性18歳、女性16歳)や再婚禁止期間が女性のみに定められていたことなどは、民法が改正され是正されました。
■ほかにも様々なテーマが
女性差別撤廃委員会による質問は多岐にわたります。日本政府が提出した報告には、第5次男女共同参画基本計画(2020年策定)の内容や法律改正の結果などが盛り込まれています。17日の審査は5時間におよぶため、いくつかのテーマについて、さらに詳しい説明が日本政府に求められるものとみられます。 委員会からの質問には、たとえば以下のようなテーマがあります。 ●政府、省庁、国会議員及び裁判官にこの条約について知らせる研修をしているか。その影響を評価しているか ●独立的な国内人権機関の設置 ●暫定的特別措置としてクオータ制度(注:議会などで男女の比率を割り当てる制度)の採用にむけた取り組み ●アイヌ、部落(注:委員会による質問の表記は「BURAKU」)、在日コリアン及び移民女性などマイノリティ・グループに属する女性や女児への差別解消の取り組み ●家父長制的態度や教育、雇用、経済生活、政治生活などでの根強い固定観念と闘うために講じられた措置 ●女性皇族には皇位継承が認められないこと ●性的暴行を助長するポルノ製品の禁止措置 ●企業の管理職や政治・社会の指導的地位につく女性を増やす措置 ●大学などの理工系分野に占める女性の割合を向上させる具体的措置 ●責任ある性行動を含む、性と生殖の健康と権利(リプロダクティブ・ヘルス・ライツ)に関する年齢に適した教育を学校で行うために講じられた措置 ●男女賃金格差是正やセクハラ防止の対策 ●男女の育児休業や育児への男性の平等な参加の推進 ●国や地方の防災会議の男女比率 ●「非嫡出子」という用語の廃止と非婚の母から生まれた子供への社会的差別を廃絶するための措置 ●慰安婦問題への対応 女性差別撤廃委員会の審査は、締結国から選ばれて、個人資格で参加する23人の専門家委員(日本人1人含む)が質問し、日本政府の代表団(内閣府男女共同参画局の岡田恵子局長ら外務省、法務省、こども家庭庁などの官僚約40人)が答えます。委員会は、それをもとに勧告を含む日本政府への最終見解を今月中にも発表する予定です。