選択的夫婦別姓も議題に? 17日に国連・女性差別撤廃委の対日審査
女性への差別をなくすために国連につくられた委員会で、日本政府の取り組みについての審査が17日に行われます。注目は、世界でも日本だけが、結婚すると夫か妻の姓に統一するよう法律で定めていることについて、21年前からこの委員会は変えるよう求めていますが、日本政府が応じていないことについて、どう説明するかです。
■女性差別撤廃委員会とは
現在、スイスのジュネーブで開催されているのは、国連の女性差別撤廃委員会です。この委員会は「女性に対するあらゆる形の差別の撤廃に関する条約(CEDAW、シードゥ)」の進捗状況を調べるためにつくられました。女性差別撤廃条約は1979年に国連総会で採択され、1981年に発効し『世界の女性の憲法』とも呼ばれるもので、日本も約40年前の1985年に批准しました。この条約の締結国は日本を含む189か国で、国ごとに委員会からの質問に文書で答える形で、女性差別撤廃条約を守るために政府が行った行政上や法律上の措置などについて定期的に委員会に報告し、委員会は、年3回の会合で順次、国ごとの審査を行います。 日本は、2021年12月に第9次報告(2014年9月から2021年6月までの取り組みを説明)を提出済みで、この内容について、日本時間の今月17日午後5時から0時にかけて約5時間の審査が行われます。これを受けて、委員会は日本政府に対し、勧告を含む最終見解を今月中にも出す予定です。日本政府への最終見解は1988年に第1次が出され、直近は2016年2月に第7・8次が出されており、今回は、それ以来およそ8年ぶりで、第9次(回数としては6回目)となります。
■注目は選択的夫婦別姓制度
審査の項目は多岐にわたりますが、注目のテーマは「選択的夫婦別姓」の制度です。法務省などによれば「夫婦が同じ姓を名乗る」と法律で定めているのは世界で日本だけだということです。結婚で同姓になることを望む夫婦の一方で、夫も妻も結婚前の姓を名乗り続けたいという夫婦もいることから、それを希望する場合は可能にするのが「選択的夫婦別姓」制度です。この制度への賛否は、自民党の総裁選や今月投開票の衆議院選挙でも取り上げられているほか、経団連も導入を求めています。実は、女性差別撤廃委員会がこのテーマを扱うのは今回が初めてではありません。すでに21年前の2003年、民法の改正を勧告していて、その後2009年、2016年にも勧告し、今回勧告されると、このテーマをめぐる勧告は4度目となります。 前回2016年の勧告は、「差別的な法律」という項目の中で、夫婦同姓を民法が規定していることや結婚できる年齢が男女で異なること、婚外子への差別的規定があることなどをあげて、「委員会のこれまでの勧告への対応がなかったことを遺憾に思う」と述べました。そして夫婦の姓については「(民法の)規定は実際には多くの場合、女性に夫の姓を選択せざるを得なくしている」と女性差別にあたる現実を指摘し、「女性が婚姻前の姓を保持できるよう夫婦の姓の選択に関する法規定を改正すること」を求めています。 今回(第9次)の委員会からの質問では「前回の委員会勧告に関して、結婚の際、旧姓の維持を女性が選択できるようにするための法律の採択にむけてとられた行動について情報を提供されたい」と書いてあります。これに対して、日本政府はすでに文書で提出した報告の中で、現在の規定が必要な理由は特に述べておらず、次のように書いています。「選択的夫婦別氏制度も含め、夫婦の氏に関する具体的な制度の在り方に関し、第5次男女共同参画基本計画は、国民各層の意見や国会における議論の動向を注視しながら、司法の判断も踏まえ、さらなる検討を進めることを定めている。また、ホームページなどでの情報提供を通じて、国民や国会での議論が深まるよう取り組んでいる。さらに、第5次男女共同参画基本計画は、旧姓の通称使用の拡大やその周知に取り組むことを定めている」 日本政府が出席する審議とは別に、14日に行われたNGOからの意見聴取の場には日本から複数のNGOが参加し、「旧姓を通称として使用することでは根本的な解決にならない」と選択的夫婦別姓制度の必要性を訴える声があった一方で、別のNGOからは「夫婦別姓のもとでは家族の結束が簡単に破壊される」といった反対意見も述べられました。女性差別撤廃条約に基づく勧告を20年以上受け続ける中、世界で唯一の「全夫婦同姓制度」ともいえるものを維持する日本政府がどう説明するのか注目されます。