冬は髪を洗えない? ガチで暗い青森の秘湯「ランプの宿」で強制的"デジタルデトックス"
源泉掘削中、「混浴露天風呂」など2025年春に再開予定
「ランプの宿 青荷温泉」は、10kmほど離れた同じ黒石市内にある板留(いたどめ)温泉の湯治宿「丹羽旅館」に生まれた歌人・丹羽洋岳(にわ・ようがく)によって昭和4(1929)年、42歳の時に開かれた温泉宿。洋岳は信心深い人で、茅葺き屋根の建物に祭壇をつくって日蓮聖人の坐像を飾り、朝夕の祈りを欠かさなかった。69歳の時に青森県の「第1回文化功労賞」を受賞し、それがきっかけでこの風流人が営むランプの宿の存在を知り、訪れた人もいるという。その後、宿は人の手に渡り、地元の旅行会社が運営している。 風呂は4カ所あって、現在は総ヒバ造りの「健六の湯」(男女別)、同じく総ヒバ造りの「本館内湯」(男女別)2カ所のみが稼働している。2年ほど前に訪れた時から「源泉の温度がぬるくなってきた」という話は聞いていたが、温度の低下が著しいため、「源泉を1本掘っている最中」(長峰徹吏社長)だという。そのため、2024年現在は「混浴露天風呂」と「滝見の湯」を閉鎖中。新たな源泉の掘削が順調に進めば、2025年春には閉鎖している2つの風呂を再開する予定だ。
毎分500Lの豊富な湯量、源泉かけ流し100%
「ランプの宿 青荷温泉」の湯量は毎分500L、100%源泉かけ流し。1軒の宿では相当な湯量だ。以前、専門家が言っていたが、源泉をかけ流しで使うには、50人の宿であれば毎分50Lが理想的だという。ここの宿は、32部屋(全和室)で定員は100人だから、十分すぎると言っていいだろう。 無色透明のやわらかな湯の質もさることながら、肌に触れる木の温もりとほのかに灯るランプの灯りがなんともいえない趣でノスタルジーを誘う。静かだし、暗いので、世も更けてくると、一緒に入っている人がいなければ、怖いくらいである。ただ湯に浸かって、自分と対話するような時間の過ごし方は、忙しい現代人の心を癒やしてくれるはずだ。
ドライヤーが使えない!
ただ、のどかな風呂場で注意したいこともある。それは、冬は髪の毛は洗わない方がいいということ。ドライヤーが使えないので、万一髪の毛を洗ってしまった場合は、タオルドライをし、ストーブの前で髪の毛を乾かさなければ、風邪を引く。 食事は大広間の長テーブルにグループごとに分かれて食べる。食事会場もランプの灯りだけだから、やはり暗い。暗がりの中、撮った写真はこんな感じであった。岩魚の塩焼きやキノコ、山菜、煮物など山宿らしいメニューであるが、ぼんやりとしか見えていないから、いつもと勝手が違う。あまりに暗いので、同行者が部屋の鍵を間違えて2つ持ち帰ってしまうというハプニングもあった。普段の生活はいかに明るさに助けられているか、ということがよくわかった。