そばに誰かがいることのありがたさ、その誰かをサポートする役割の大きさ【老親・家族 在宅での看取り方】
最近、気になったある「医療ケア児」に関わる事件がありました。それは、痰吸引が必要な8歳の医療ケア児を放置し死なせたとして32歳の母親が逮捕されたという痛ましい事件でした。 妻が怖い。このまま死んでいくのはむなしい…80代男性患者が涙ながらに訴えた かえすがえすも8歳の娘さんが亡くなったことが残念で仕方ありません。協力してくれる看護や社会福祉システム、在宅医療など、多くの選択肢があればこのような事件は起こらなかったのではないかと思うのです。ただ、現実はまだまだ体制が整っておらず、私も手探りで対応している状態です。 医療ケア児は、ご自宅で療養される場合ですと、常に目を離さないようにしなくてはならず、高齢者のケアとはまた違った意味でご家族の負担が大きいのです。 実は私たちのスタッフの中にも、医療ケア児を手掛けている者がいます。今年の春に三男を早産で出産したのですが、心肺停止状態。NICU(新生児集中治療室)やGCU(新生児回復室)の治療を経て、自宅で療養をしています。 彼女のお子さんは胃の位置に問題があり、経鼻胃管により栄養供給し、酸素吸入や吸引を定期的にしています。 現在は他の患者さんと変わらず、当院の訪問診療で協力いただいている、訪問看護などの事業所の皆さんにもケアをお願いしている状況です。 「自分の子どもを家で看るようになってから、実際に家族が在宅医療を受ける立場になって、初めてその負担や苦しみを理解できるようになりましたし、それになによりも医療ケアの範囲を家庭にまで広げ、患者を中心に据えたケアを行うことができる、自分たちが行っている在宅医療の価値を改めて確認することもできました」 子どもの自宅療養を行いしばらくしてから、彼女は私にそんな感想を伝えてくれました。 その上で、医療ケア児が果たして障害が残らずに健やかに育っているかは、成長しなければわからないということも痛感したといいます。 すぐに結論や結果を急ぐ現代において、それに慣れてしまい、つい健やかに育ってほしいと思いながらも、本当にいま子どもにしていることが正しいことで、果たして子どものためになっているのかという答えが、日々の看護ではわかりづらく、最終的に子どもの成長を待たなければ自分のやったことがはっきりしないということにもどかしさを覚えると、そんなやりきれない気持ちも伝えてくれました。 いずれにしても、今はただ現代の医療の範囲でできることをするのみなのです。 冒頭の事件や女性スタッフの思いに触れ、「そばに誰かいる」ことのありがたさと、その誰かをサポートする在宅医療の役割の大きさを、改めて考えさせられたのでした。