ガチャマシン開発者は「電源いらず」にこだわる? タカラトミーに聞いたカプセルトイ60年の歴史と矜持
偽コイン対策が必要に
ガチャ1は、その頃、偽コインが出回り初めて、その被害が無視できない規模になってきたため、その対策機構を盛り込んだマシンとして開発したのだそうだ。コインが通る場所は、それまでサイズを見て、それより小さいものは下に落ち、大きいものは通り道に入らずにやっぱり下に落ちる仕組みだったが、そこに金属の質が分かる精度の高い機械を入れた。これもセンサーなどは使わず、機械式のものを採用したという。 ガチャ1は、そのセレクターを搭載するためのマシンだったこともあって、マシンとしては、「スリムボーイ」から、ほとんど変わっていなかった。 「急いで出したので、半完成品みたいなマシンだったんです。それで、スリムボーイ以来、オペレーターさんやユーザーさんからのフィードバックがたまっていて、自分たちでも改善したいと思っていた部分を採用して開発したものがガチャ2です」と福本さん。 スリムボーイでは、100円から400円まで対応する機構を内蔵していたけれど、ガチャ1からは500円まで対応できるようにした。ただ、その機構がトラブルが多く、そのトラブルに対応できる人材として、アミューズメント・マシンの業界でゲーム機を作っていた藤本さんが入社したそうだ。 「それで、入社前から気になっていて、転職の時から提案していた『空打ち問題』にも取り組みました。実は、ガチャ1までのマシンでは、中のカプセルがなくなってしまっても、お金を入れたらダイヤルが回せてしまうんです」と福本さん。 その対策のために、内部に重さを検知するセンサーを入れて、乾電池で駆動させるメカニズムを開発。今から考えると、空打ち対策が長い間放置されていたことの方が驚いてしまうが、これは、ガチャの黎明(れいめい)期には、店舗一軒当たりのガチャの設置台数もさほど多くなく、大抵は、店の人が見える範囲で運用されていたことの名残りだったのだろう。 それがスリムボーイ以降はスーパーなどにも大量にマシンが並ぶようになり、偽コイン問題などもあり、空打ちも問題として認識されるようになったわけだ。個人商店の軒先のオマケのような存在だったガチャは、2000年頃から本格的なビジネスになっていく。機械も、それに対応して進化していったのだが、面白いのは、それでも電子化には向かわず、機械式にこだわって現在に至っていること。 ガチャ2で、どうせ電池を入れるならと、何個売れたかが分かるカウンターも付けたそうだが、これは、あまり作業の効率化などにつながらず、カウンターのデータ自体の生かし方も確立しなかったこともあり、現在ではカウンターそのものを付けていないという。 「オペレーターさんから、何個売れたかがすぐに分かるようにしてほしいという要望があったんです。でも、設置台数があまりにも多くなって、いちいち確認できなくなってしまったんです。だったら出荷の個数とか、100円玉の枚数を数えた方が結局早いということになって、カウンターはやめました」と福本さん。 ガチャ2に代わって、2007年に登場したのが、現行のマシンでもある「ガチャ2 Ez」。このマシンでは、空打ち防止の機構も機械式にすることに成功し、再び電池なしの完全無電源のマシンに戻った。 「ガチャ2と、基本は一緒なんですけど、もっとシンプルなものを作ってくれという現場からの要望もあって作ったのがガチャ2 Ezですね。コストダウンも行い、若干高さが低くなったり、幅が狭くなったりしています。あと、どうしても電池はなくしたくて、空打ち防止も機械化しました。一定の重さのものが乗っていないとロックがかかるという機構を機械でやるようにしたんです。別のメーカーさんでは、重さではなく、そのエリアにモノがあるかないかをチェックする機構を、やっぱり機械でやってます」と福本さん。