「斎藤佑樹ならではの恩返しを…」元プロ野球選手のネクストキャリア 今追いかけている〝夢〟は
「自分の武器になっている」と感じることとは?
「野球界への恩返し」の一つに、斎藤さん自身も抱いていた、「アスリートの将来への漠然とした不安」の解決がありました。 「現役時代、悩みを聞いてくれる親や友人知人は身近にいたのですが、自分の思いを話すだけで終わってしまうと感じていました。そこから一歩踏み込み、『こんな道もあるのでは』といった提案をしてもらえる場があったら良いなと思っていました」 その原体験から生まれたのが、アスリートのネクストキャリアを考えるサービス「アスミチ」でした。 斎藤さんが取締役を務めるシーソーゲームにて提案をしたアスミチでは、元アスリートの体験をもとにした記事をはじめとするネクストキャリアの情報発信をしています。 キャリアプランナーへの相談や、デジタルスキルを習得するリスキリング講座、さらにビジネスマッチングも展開していく方向で、一気貫通したサポートを提供予定です。 斎藤さん自身、アスミチを中心としたプロジェクトの推進を通じて、多様な考え方や選択肢に触れるようになったといいます。 その一方で、引退後に新たな分野を突き進む元アスリートたちに憧れを抱くこともあると打ち明けます。 「『今何をしているの?』と聞かれた時、明確な業種をなかなか答えづらいところがある反面、フットワーク軽く、動くことができています。アスミチで感じた課題を、『株式会社斎藤佑樹』として出会った人と一緒に解決に向けて取り組める可能性があることが、自分の武器になっていると感じています」
少年少女専用サイズの野球場づくりへ
引退から2年半が経つ今、斎藤さんが明確に見据えている目標は、「少年少女専用サイズの野球場を作ること」です。 今年6月、アスミチとマイナビアスリートキャリアが共同開催した、アスリートのキャリアを考えるトークイベントでは、この夢の理由をこう語っていました。 「日本では、子どもたちは河川敷やグラウンドで野球をしますよね。そうなるとランニングホームランが多くなります。でも、フェンスオーバー(ホームラン)でしっかりとダイヤモンド(ベース)を踏んで1周返ってくる経験を味わってほしい。もしかしたらそのホームランの一球の成功体験が、その子の野球人生における糧になるかもしれないからです」 その思いの元、野球場の建設場所について検討を重ねてきました。 現時点では北海道夕張郡長沼町が最有力候補に。「北海道」を選んだのは、やはり11年間所属したチームにゆかりのある地だからだといいます。 「将来的には子どもたちが安心して野球ができ、ケガのケアをできる場所にもしたいと考えています。クリニックを併設して自分の体を知り、競技だけではなく体やケガのことも考えた場所にできたらという考えを巡らせています」 実は、斎藤さんが引退当初に起業して計画した事業は、「ケガをした選手へのアプローチ」でした。 しかし、リサーチする中で「野球選手を引退したばかりの人間が、すぐに課題解決できるほど甘くはない」という現実に直面し、構想をあたためていたという経緯がありました。 それから2年半、たくさんの人やモノとの出会い、アスミチの運営における気づきなどの「点」と「点」が結びつき、「線」になっていく――。 ケガへのアプローチ法をはじめとする事業の可能性は、斎藤さん自身の経験や知見の広がりと連動していると筆者は感じました。 斎藤さんは「アスリートの課題解決をする手伝いができることが、僕自身とても嬉しく思っています」と力強く話します。 そんな斎藤さんの「線」はこれからも増え、ゆくゆくは「面」になっていくのかもしれません。