村上佳菜子「かいちゃダメ!の言葉はトラウマ」アトピーと向き合った29年間
「ゆるく、自分ができる範囲で」ポジティブな気持ちで治療
――引退後、症状が安定したそうですが何か変えたことはありますか? 村上佳菜子: 引退してからは生活リズムも変わって、心にも余裕が生まれました。食事に気を遣うこともできて、肌もどんどん良くなっていったのかなと思います。皮膚科で処方されたステロイドや保湿の薬を使用しながら、食事はなるべくオーガニックのものや質のいい食材を使うようにしたり、サプリを飲んだりしています。 引退後、皮膚科はいくつか行きましたが、自分に合う先生を見つけるのに苦労しました。自分の中では症状がひどいと思って、勇気を出して皮膚科に行っているんです。でも先生からしたら、たくさん見てきているアトピー患者の一人だから「そんなにひどくないので、これ塗っておけば大丈夫だよ」と簡単に言われてしまうこともあり、少しショックでした。 そんななか、友達の紹介ですごく親身になってくれる先生に出会えました。わかりやすいイラストを使って、なぜアトピーが起きているのか、なぜこの薬を使わなきゃいけないのかを丁寧に説明してくれて。仕組みを理解した上で使うので、薬を使う怖さもなくなり、改善へと進んでいけました。 ――アトピーを治療していく上で、大切にしている心の持ちようなどはありますか。 村上佳菜子: 「先生から言われたから、薬を塗らなきゃいけない」と思ってしまうと、“やらされている”感覚になってしまいますよね。そうではなくて、アトピーを治したいというポジティブな気持ちを“やりたい”感覚に変換して、前向きに治療するようにしています。 もちろん今でも、疲労がたまった時や季節の変わり目に、症状が出てしまう時もあります。そんな時でも「わっ!出た!どうしよう」と悲観するのではなくて、「ああ、出ちゃったからちゃんと気をつけなきゃ」と、体からのサインだと思って受け止め、ポジティブに切り替えて治していくようにしています。直近の食事がジャンキーだったらヘルシーに変えていくとか、いい感じにゆるく、自分ができる範囲でやっていければと思います。 --- 村上佳菜子 愛知県出身。2014年ソチオリンピック日本代表になるなど、フィギュアスケート女子シングル種目で活躍。競技引退後はプロフィギュアスケーター、解説者、タレントとして多岐にわたって活動している。