村上佳菜子「かいちゃダメ!の言葉はトラウマ」アトピーと向き合った29年間
2014年ソチオリンピックのプレッシャーで症状悪化へ
――症状が一番ひどかったのは何歳くらいの頃ですか? 村上佳菜子: 現役時代、高校から大学時代が一番ひどかったと思います。練習に必死になりすぎて心身ともに余裕がなく、美容のために食事や肌のケアをしたくても、実行できませんでした。また、ドーピング対策の事情でステロイドが使えなかったので、薬も塗れなかったんです。なので一般の保湿クリームを塗るんですが、肌に残る油分で逆にかゆくなって。なかなか治らなくてとても苦労しました。 なかでも特に悪化してつらかったのは、2014年のソチオリンピックがあった19歳の頃です。アトピーの悪化の理由は、おそらくストレスですね。前シーズンの世界選手権で4位になり、自分の中では本当にパーフェクトな出来だったこともあり、燃え尽き症候群に陥ってしまい……。周りから期待されているのがわかっているのに、気持ちのスイッチが入らなくてうまくいかず、どうしようもない毎日でした。「かくこと」でストレス発散しようとして、泣きながらかいちゃって。まるで火傷しているみたいに、肌はひどく荒れていました。 オリンピックのプレッシャー、そのストレスによってひどくなるアトピー。いろんなことにおいて大変な時期でしたね。まだ30年ぐらいしか生きてないですけど、これ以上苦しいことはないんじゃないかなと思った時間でした。 ――当時、周りの人の反応でつらかったことはありますか? 村上佳菜子: オリンピックの衣装を作る時、先生と母親から「ちょっと腕が見ていて痛々しいから、ノースリーブの衣装で作る予定だったけど、長袖にした方がいい」と言われたのがすごく傷つきました。私はノースリーブの衣装が良かったので、いまだに残念な気持ちがあります。 ――お子さんのアトピー症状に悩んでいるご両親も多いと思います。ご自身の体験から、言ってほしくなかったこと、言ってほしかったことについて教えてください。 村上佳菜子: まず「かいちゃダメ!」と、強く言わないでほしかったですね。特に子どもの頃は「すごくかゆいのになんでダメなの?体がかいてって言っているんだよ」と思っていました。でも母親からは「絶対かいちゃダメ。荒れちゃうでしょ?汚くなるよ」と。そこでさらにストレスを感じて別のところがかゆくなることもありました。「かいちゃダメ」という言葉は、私のトラウマになっています。心臓が飛び出そうなくらい、ドキッとする言葉です。 なので、もしかいているところを見かけても、「ちょっと冷やしてみたら?」とかゆみが収まる方法を教えてあげつつ、優しく寄り添ってあげるのがいいんじゃないかと思います。