【にしたんクリニック・西村誠司】生活保護を受けていた少年は、いかに30億の豪邸を持つまでに成り上がったのか?
稼いだ金をどう配分するか、考え続けている
中学、高校では稼いだ金を貯金しながら、時にはビデオデッキやラジカセなどといった大きな買い物もした。もちろん自分が欲しいから買うのだけれど、それでも選ぶものは、家族とともに使える家電がほとんどだった。 「自分で稼いで貯めたお金を、どう分配していくのか、自分で考えて決める。そういう訓練が13歳からできた私は、むしろ幸運だったと思っています。 私は今、オーナー企業の社長であり、株主も私しかいません。会社としてあげた収益から、何をどう使うか、投資なのか、新事業開拓なのか。当たり前ですが今も自分で決め続けています。私は子供の頃から、頼れるのは自分自身しかいないと思って生きてきました。もちろん父や母から愛を受けて育ちましたが、早くから働いたことで『結局、最後に頼れるのは自分と自分の能力だけ』と身に沁みてわかりました。もっと稼ぎたければ働くボリュームを増やして、自分も成長していけばいい。そういうふうに比較的早くから気づくことができたのは、ありがたいことだったと思っています」 大学生になった21歳の頃、西村氏は人生を変えるある1冊の本に出合う。イギリス作家、ジェフリー・アーチャーの小説『ケインとアベル』だ。 「裕福な家庭で育ったケインと、ポーランドから移民としてアメリカにやってきて才覚ひとつでホテル王になるアベル。2人の人生を描く作品で、私には恵まれない環境でも自分の腕1本でのし上がっていくアベルがとても眩しく見えました。だから私も将来事業家になろう。そう21歳で決めたのです」 西村氏が起業することになるのはそのわずか4年後。インタビュー第2回では、創業当時と、リスクに挑み続けたその後の人生を語る。 西村誠司/Seiji Nishimura 1970年愛知県生まれ。アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)を経て、1995年インターコミュニケーションズ(現エクスコムグローバル)を設立。モバイル通信サービス「イモトのWiFi」、メディカル支援サービス「にしたんクリニック」「にしたんARTクリニック」などさまざまな事業を展開。著書に『最強知名度のつくり方 売上98%減からのV字逆転を実現した必勝術』がある。
TEXT=安井桃子