ホンダCR-V 水素燃料電池車で日本導入 しかもプラグインで電気でも走れるのだ
2本の水素タンクを搭載
プラットフォームは6代目CR-VのPHEVをベースとしている。e:FCEVは乱暴にいえば、CR-V PHEVからエンジンを降ろし、燃料電池システムと2本の水素タンクを付加した格好。燃料電池システムを搭載するため、フロントのオーバーハングをPHEV比で110mm延長している。このうち燃料電池システムの搭載に必要なのは60mmで、残りの50mmはe:FCEV専用のデザインに使ったとのこと。 「フロントフード、フェンダー、バンパー全体で伸びやかさを演出し、知的で大胆なフロントまわりのデザインとしました」と担当デザイナーは説明する。ヘッドライトはベース車両に対して薄型にし、ワイド感を強調。CR-V伝統の縦型リヤランプはクリア化することで、FCEVらしいクリーンなイメージを与えている。 パワーユニットに関しては、FCEVの普及拡大を見据え、ベース車両に大幅な変更を加えることなく構成している。コスト低減を意識したということだ(車両価格は未発表)。IPUと呼ぶバッテリーパックや充電器はPHEVのコンポーネントを流用。CR-Vへの搭載性を考慮し、GMと共同開発した燃料電池システムの下に位置するギヤボックスは低ハイトにこだわって新開発。これをモーターと組み合わせ、燃料電池システムと一体化した。 2本の水素タンクはプラットフォームの変更を最小限としつつ容量を最大化して搭載。1本を後席下、もう1本を荷室に搭載する。同一サイズを2本積んだほうがコスト面では有利だが、容量を最大化するためにそれぞれ別諸元にした。後席下のタンクは「(頭上スペースがきつくなるので)後席のヒップポイントを変えない」ことを条件に諸元を決めたという。シート側では、スライド機構とフレーム構造を変えることで、水素タンクの容量確保に貢献した。 燃料電池のセル構造は、2016年のクラリティ・フューエルセルが搭載していた仕様に対し大幅に変化。よりシンプルな構造にすると同時に、白金使用量を大幅に低減することで低コスト化。セルのスタック(積層)数を前モデル比で15%削減したのも低コスト化につながっている。スタック数が減っているのでグロスの出力も減っているが、発電面積の最適化や補機類の低消費電力化によって、従来と同等のネット出力を確保している。 耐久性やNV(振動騒音)、低温始動性や冬期の燃費悪化に対する対策など、燃料電池システムに関しては低コスト化と並行して全方位で性能アップが図られている。使い勝手のいいSUVを水素と電気のデュアルのエネルギー源に対応させ、複数の給電機能を組み合わせたマルチプレーヤーがホンダCR-V e:FCEVだ。
世良耕太