特別講師に豊田章男、井上康生、ホリエモン…岡田武史が学園長のFC今治高校で目指す、ロールモデルのない時代に大切な「エラー&ラーン」教育
一期生の生徒たち完全主導の「オープンキャンパス」
岡田を驚かせたのが、今夏のオープンスクール。生徒たちから「企画と運営をやらせてほしい」と言われたことだった。 「俺も最初は『大丈夫か?』と聞いたんだよ。そうしたら『大丈夫です』と。『余計な口出しはしないでください』とも言われて。でも、オープンスクール当日になっても、何をやるかまったく報告がない。 『学園長は何かやらなくていいのか?』と聞いても、『別に何もやらなくていいです』って返してくる。本当に大丈夫かなと思ったら、人が満杯になった講堂で、『私たちの学校はこうだ』ってきちんと説明していたし、こっちの部屋では(希望する)保護者と在校生のワンオンワンで、あっちの部屋では中学3年生と(在籍の)保護者のワンオンワンで話ができるようにしていた。 実によくできていたと思う。感心して見ていたら、最後に『ちょっと時間が余りそうなので、岡ちゃん何かスピーチしてください』って(笑)」 第一期生は定員80人のうち34人にとどまったが、オープンスクールには多くの人が詰めかけ、関心が広がっていることを岡田自身、実感できた。 生徒たちの手づくりによるオープンスクールが、何よりこの学校のやりたいことを表現してくれた。 FC今治高校は寮を完備しているが、3年生になったら退寮するルールが設けられている。 町に出て、町に住むことが、共助のコミュニティにもつながると考えたからだ。学校として空き家を改修してルームシェアをする準備も進めているという。 「本当のことを言えば、3学年揃うと今ある寮の部屋が足りなくなるんだよ。寮をもう1つつくるわけにもいかないから、それだったら町に住めばいいじゃないか、と。 生徒たちは『ボヤージュ(FC今治の試合ボランティア)』での活動もやっているから、そこで出会った方たちに郷土料理を教えてもらって、その家で食べさせてもらったり。みんないろいろともう動き出しているんだよ」 クラブが手掛ける米づくりにも、生徒たちは参加している。 毎年300キロほどになる米を児童養護施設に寄贈したり、スタジアムで提供したりしている。FC今治が目指す共助のコミュニティ。その芽がFC今治高校の開校によって一歩ずつ動き出していることは間違いない。