2000万円オーバー! アーマーゲーと呼ばれていた時代のメルセデス・ベンツ「500TE AMG」は世界に1台しかない超希少車でした
W123は約10年間で300万台近く製造された
この名作にまつわるエピソードのなかでもっとも有名なのは、ベースモデルがほぼすべての大陸でタクシーとして活躍し、とくに過酷な環境では今でも現役で見かけることができることだろう。プロのタクシードライバーたちはW123をこよなく愛し、1985年にその後継モデルである「W124」が登場すると、旧西ドイツのタクシードライバーたちは街頭で抗議の声を上げたとさえいわれているのだ。 もちろん、W123はタクシーだけのクルマではなく、1976年から1986年の間に300万台近くが製造された、自動車史上最高品質の量産車のひとつとみなされている。生産台数の大半は4ドアリムジン(セダン)が占めていたが、そのほかにもハンサムなクーペ、ロングホイールベースの「プルマン(6ドアリムジン)」にくわえて、スタイリッシュで実用的なエステートワゴンなど、豊富なバリエーションモデルも設定された。 ただ、決してパフォーマンスカーとして意図されたものではなく「280E」用のM110型直列6気筒DOHCガソリンが、ラインアップ上もっともパワフルな純正エンジン。くわえてダイムラー・ベンツが世界に先駆けたディーゼルエンジンも潤沢に用意され、その中には効率的な直列5気筒レイアウトを持つことで知られる3Lの「OM617」型ターボディーゼルも含まれていた。
おそらく世界で1台の、AMG製V8を搭載したS123ワゴン
今回ボナムズ「AMG Rediscovered Online」オークションに出品された1979年式メルセデス・ベンツ「500TE AMG」は、ダイムラー・グループの1部門となる以前のAMGが一品製作したと思われる、特別な1台。その最大の注目要素は、生来の2.8L 6気筒エンジンから換装されたメルセデス「M117」型V8エンジンである。 この500TEを2020年に逝去するまで愛蔵していた、サンフランシスコの「AMGウェスト」社代表、故バリー・テイラー氏の記録によると、このV8エンジンはAMGによって手が入れられ、標準の5.0Lから5.2Lに拡大されていたという。 創業当初から、車両全体のバランスまで考慮するチューニングカンパニーのひとつだったAMGでは、フロントに搭載された大型V8からの追加パワーに対応するため、サスペンションの改良とホイールも大型化を行っていた。 また、この時代のAMGを象徴するボディキットやブラックアウトされたモールディングにくわえ、当時のBBS製バスケットウィーブ型スプリットリムホイールが装着され、オリジナルの「アストラル・シルバー」のボディに、カスタマイズされた赤い本革インテリアの組み合わせで仕上げられている。 この個体にはなんらのドキュメントも添付されていないながらも、AMGの大家であるテイラー氏がAMGのIDプレートとシリアルナンバーを付けていると主張していたことから、数少ないアファルターバッハ製コンプリートカーである可能性は非常に高い。 そのことを証明するかのように、エンジンルーム内のバルクヘッドを見るとダイムラー・ベンツ社オリジナルのシリアルナンバー「123.093.12.008986」にくわえて、そのサイドにAMGとしてのナンバーが打ち込まれている。
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