脇本雄太と別線選んだ窓場千加頼「近畿はガチンコ勝負」継がれゆく“魂”刻んだ向日町記念/記者が見た記憶に残る一戦
いよいよ19日、G1戦線のラストを飾る競輪祭が開幕する。このシリーズでグランプリの出場選手が決まり、競輪界は一気に締めくくりの12月に向けて“年末”の色を濃くしていく。今回は今年ここまでの激闘を振り返るべく、選手の声を直接取材し続け、2024年の激闘譜を“現場目線”で知る競輪記者たちの「記憶に残る一戦」についてお届けする。(企画・構成 netkeirin編集部)
9月8日 向日町競輪「平安賞」決勝(アオケイ・宮本彩記者)
今年の平安賞は向日町競輪場がしばらく大規模改修工事をするとのことで、今の向日町競輪場での記念は最後となった。まさかそんな大事な平安賞へまだまだペーペーの自分が取材に行くとはびっくり。しかも初めての向日町競輪場だ。初めて現場に取材へ出るような緊張感を持ちながら競輪場へ向かったのを覚えている。 競輪場がどんな変化を遂げるのかは分からないが、地元勢にとっては慣れ親しんだ競輪場での最後のレースになるし、開催前からかなり気合が入っていた。更に、地元勢だけでなく近畿勢全体で気合が入っているのを肌で感じた。 その中でも注目していたのは窓場千加頼だ。今年のウィナーズカップ決勝で窓場-脇本-古性で並び、窓場の果敢な先行から脇本-古性が抜け出し、貢献する走りで魅せた。そのレース後に2人からの賞賛を受け、涙を流していた様子が印象深い。そこからも目を見張る活躍で、手を伸ばせばS班も可能な位置まで力を付けて上位陣の仲間入りを果たした。
本領を発揮し始めた窓場が挑んだ特別な「平安賞」。初日特選は北井佑季を強引にだが叩くことに成功。ただ、番手の脇本の位置に飛び付く形となり共倒れの展開。その悔しさを胸に一戦一戦集中力を高めながら最低ノルマでもある決勝まで駒を進めた。 決勝に勝ち上がった地元のメンバーは窓場、山田久徳の2人。そして同じ近畿の脇本。清水裕友に西で松岡貴久がお任せするのは想定通り。一番重要視されるのが近畿の並びなのだ。これは記者の間でも色んな考察が飛び交ったし、大森慶一、大槻寛徳の東北勢、南関で1人の松谷秀幸も近畿勢の動向を見守ってからのコメント出しになっていた。並びが決まるまで少々時間を要したが、最終的には窓場-山田の地元両者と脇本で分かれることとなった。 競輪はライン戦。勝ち上がりにどれだけ多くの味方を増やせるか。ラインが長くなることも珍しくなかったし、まとまる選択肢ももちろんあったと思うが、悔いのない平安賞にしたいという窓場の強い思いがあった。脇本も地元の間は割れないという思いからこの並びに落ち着いた。「近畿はガチンコ勝負」と先輩達が築き上げた勝負魂を決勝の場で披露することになったが、この選択には現在は解説者として活躍している村上義弘が直前のトークショーを行った際に嬉しさを口にしていた。