「成人脊柱変形症」の初期症状はご存じですか? 原因や治療法も医師が解説!
受診から診断までの流れ
編集部: 医療機関では、どのような検査がおこなわれますか? 光山先生: まずは立位での全脊椎のレントゲン検査をおこない、背骨の全体的なバランスを確認します。その際には、正面と側面の2方向から背骨の配列を確かめ、弯曲の程度を調べます。そのほか、痺れや麻痺などの神経症状が出現している場合にはMRI検査をおこない、神経の圧迫の有無を調べます。 編集部: 様々な検査をおこなうのですね。 光山先生: さらに、CT検査で骨の形状や椎間板の変性と横になった状態で、脊柱変形がどの程度改善されるかを確認します。骨粗しょう症を伴うことが多いので、骨密度検査も実施します。 編集部: 脊柱変形と診断された場合には、どのような治療をおこなうのですか? 光山先生: 症状が軽度であれば、痛みを軽減するための薬物療法や筋力を維持するための理学療法をおこないます。腹筋や背筋など体幹の深筋群の運動療法で症状が軽減することがあります。そのほか、姿勢を意識しての散歩や水中での歩行なども効果があるようです。 編集部: そのほかにも治療方法があれば教えてください。 光山先生: 痛みが強い場合には、ブロック注射をおこなうこともあります。ただし、腰や足の痛みを軽減することが目的であり、脊柱変形そのものを治すことはできません。 編集部: それらの治療をしても症状が進行したり、日常生活に支障があったりする場合はどうするのですか? 光山先生: 全身状態を考慮した上で、手術治療を検討します。手術は、様々な固定手術を組み合わせ、ときに背椎骨の一部を削除し、生理的な背骨の弯曲に近い形状にする矯正固定術となります。 編集部: 手術をすると腰が真っすぐになるのですか? 光山先生: はい。手術後には腰曲がりの状態が改善し背中が伸ばせるようになります。長時間歩いても腰の痛みが出なくなり、歩行障害も解消されます。そして、「真っすぐ立てるようになった」「長く歩けることで外出や旅行ができるようになった」「足の痛みがなくなった」など、日常生活動作が改善します。 編集部: 反対に、手術のデメリットはありますか? 光山先生: 動きのある背骨を矯正固定するので、その範囲での背骨の動きが失われます。それによって、下着を履くなどのかがむ動作がしにくくなることがあります。また、ほかの背骨の手術と比べて、手術時間が長く出血量が多いなど侵襲が大きい手術です。しかし、「年のせい」と諦めていた腰曲がりによって制限されていた歩行など日常生活動作が、手術によって改善することが期待できます。ただし、受診したら必ず手術というわけではないので、気になる症状があれば、まずは専門医にご相談ください。 編集部: 最後に、読者へのメッセージをお願いします。 光山先生: ここ10年くらいの間で、成人脊柱変形の病態解明が一段と進み、術式もより侵襲の少ない方法へと改善されています。そのため、腰曲がりなどで悩んでいる場合は「年のせいだから仕方ない」と諦める前に、脊椎の専門医にお気軽にご相談ください。ただし、足の麻痺などの重度の症状がある場合には、早めに受診してください。