「成人脊柱変形症」の初期症状はご存じですか? 原因や治療法も医師が解説!
脊柱変形はなぜ起きるのか?
編集部: なぜ、脊柱が変形するのですか? 光山先生: 成人脊柱変形が起きる一番の原因は加齢です。人間の背骨は脊椎骨が連なって構成されていますが、その間には椎間板という組織が挟まっています。この椎間板は、衝撃を吸収するクッションの役割を果たしていますが、加齢とともに椎間板が変性し、弾力を失っていきます。その結果として、上下の脊椎骨にすべりや傾きが生じることがあり、それらが積み重なることで背骨が変形し、腰が曲がってしまうのです。 編集部: 背骨の加齢が原因なのですね。 光山先生: そのほかにも、加齢とともに筋力が低下したり、骨粗しょう症が原因となって背骨に骨折が起きたりすることでも、背骨の変形が促されます。 編集部: 腰曲がりなどの成人脊柱変形症は、どのような人に多くみられるのですか? 光山先生: 中高年以上の人に多く発症し、特に女性にみられることがわかっています。なぜ男性と比べて女性に多く発症するのかというと、女性の方が骨粗しょう症の発症が多いことが原因として考えられています。 編集部: なぜ、女性の方が骨粗しょう症を多く発症するのですか? 光山先生: 女性ホルモンの1つである「エストロゲン」が関わっています。エストロゲンには骨の強度を保つ働きがあるのですが、閉経後の女性ではエストロゲンの分泌量が減少し、骨粗しょう症を発症することが多いですね。また、エストロゲンの減少により、椎間板の変性が進みやすいとの報告もあります。 編集部: どのような初期症状がみられますか? 光山先生: 長い時間歩いたり、立ったりしたときに生じる腰背部の痛みです。腰曲がりの状態になると、腰や背中に大きな負担がかかるようになることが原因です。座ると痛みが軽減し、ふたたび歩いたり立ったりすることができます。このような「疲労性腰痛」による立位歩行障害が、成人脊柱変形症の特徴的な症状です。 編集部: そのほかには? 光山先生: 背骨には脊髄や神経根という、神経の保護組織(通り道)という役割もあります。脊柱が弯曲することで、その神経の通り道が狭く(脊柱管狭窄症)なり神経に障害が生じると、足に痛みやしびれ、ときに麻痺などが出現します。そして、腰や足の痛みで長く歩けない状態が続くと、足腰の筋力が衰えてきます。また、弯曲によりお腹が圧迫されることで、食後に胸焼けや胃もたれなど逆流性食道炎のような症状を自覚したり、食欲が低下したりすることもあります。