BE:FIRST、Number_iらを手がける気鋭プロデューサー、MONJOEの歩みとビジョン
韓国との競争意識、次の時代に向けて
―BE:FIRSTもNumber_iも世界に打って出ようとしています。MONJOEさんとしては海外に出ていくことについてどんなことを考えていますか? MONJOE:それぞれのグループや会社の方針があるので一概には言えないですが、僕自身の肌感覚としては、K-POPのクオリティって本当に高いんですよ。あのクオリティにたどり着くことはなかなか日本ではできない。それもあって真似をするよりは、自分たちのオリジナルが何なのかを突き詰める方が得策だと思ってます。あと、今は日本の音楽への注目がすごく高まってるんですよね。ソングキャンプに行っても「シティポップや70~80年代のAORみたいな曲を作って」とか「こてこてのアニソンを作って」と言われることもあります。ジャンルはなんであれ、日本の音楽が来てる。そのことをわかったうえで、自分たちにしかできないものを作るっていう意識を持つことが大事だと思います。 ―韓国のレベルが高いのは何が大きいと思いますか? MONJOE:プロデューサー目線で言うと、例えばセッションする場合、1曲に対して大抵2人以上のトップライナーが入るんですが、全員のアイディアのクオリティがメチャクチャ高いです。「これ絶対、世界的に売れるじゃん」っていうものを出してくる。あと、歌詞を完成させてレコーディングして納品するまでのスピードが異常に早いです。それくらいのレベルじゃないと生き残れないほど競争が激しいんですよね。韓国に行ってその環境を目の当たりにして、「俺はぬるま湯に浸かってたな」と思いましたし、この環境に喰らいつくことができるようになれば日本で無双できるなって思いました。それに、今は世界中のソングライターがソウルに集まるんですよ。K-POPのヒット曲を1曲でも作れたら大きいので、みんなそれを狙いにきてます。外国人の作家がたくさん集まってくるなかで、韓国の作家は自分の島を守らないといけないので、どんどん競争率が高くなっています。 ―MONJOEさんはスウェーデンにも制作のために行かれてますよね。 MONJOE:スウェーデンは、 音楽の国外輸出に強いですね。特に今はみんなが韓国のマーケットを見ている印象が強いです。この前行った時も、作家がみんなK-POPグループの話をしてて。人気のあるグループの曲に一回でもクレジットされると神扱いされて、いろいろなところから一緒にセッションしようという連絡が来るんですよね。僕が知ってる範囲内で、日本人でK-POPにしっかり食い込めてる人はBE:FIRSTやMAZZELの曲を作ってるALYSAさんぐらい。日本でちゃんとキャリアを積んで、韓国のシーンにも食い込めるようになったら世界中から引っ張ってもらえるようになると思うので、そういうポジションを目指したいです。 ―ちなみに、BMSG関連とNumber_i以外で特に印象に残っているプロデュース曲というと? MONJOE:たくさんありますね。例えば、7月にリリースされたm-flo loves Maya「HyperNova」は完成したときに笑っちゃったぐらい最高だと思います。NewJeansやILLITなども取り入れている2ステップ・ポップスの元祖はm-floだと思っていて。それを本人たちも自覚していると思うんですよ。そのうえで、メジャーデビュー25周年で何を出したらかっこいいかっていう僕なりの課題があって。それで「HyperNova」が出来上がり、「これしかないよね」っていう感覚が得られたのですごく嬉しかったです。あと、TIOTの「Paradise」は僕にとって人生初の韓国で盤が売られた曲なので、韓国でキャリアを積んでいくっていう自分の目標もあって思い入れのある曲ですね。 ―プロデュース業でお忙しいなか、ソロとして3年ぶりの2ndアルバムを制作中とのことですが、MONJOEさんのなかでソロ活動はどんな位置づけなんでしょう? MONJOE:ソロはずっと続けていきたいですね。というのも、ソロを始めたきっかけっていうのが、いろいろなアーティストと関わる中で、「こんなにいいアーティストがいるんだよ」っていうことを知らしめたいっていう気持ちからだったんです。1作目の『We Others』はアーティスト活動を通じて出会った人たちを巻き込んで作りましたが、最近はアーティスト活動はそんなにやってないので、2作目はプロデュース活動のなかで出会った人たちと一緒に作りたいと思ってます。次はもっと開けたアルバムにする予定です。 ―ソロ、DATS、プロデューサー/トラックメイカーとしての活動といろいろとあるなかで、バランスみたいなものは考えているんですか? MONJOE:綿密には考えてませんが、DATSはバンドを通して何を表現したいのかとか、何を伝えたいのかっていう明確な目的意識がないと、あまりモチベーションが生まれないかなと。だから、ちゃんと目的意識ができたら活動再開するでしょうし。例えばメジャーレーベルと1年に1枚アルバムを出すみたいな契約をするスタイルとは違う形で活動するのがいいなと思ってます。 ―今日の話に出た音楽愛、ヒップホップ愛の話にも通じると思いますが、強い気持ちのもとでやりたい音楽をやっていないと、すぐ受け手にバレる時代でもありますよね。 MONJOE:メチャクチャバレますよね。アーティストが本当にやりたい音楽をやる流れが強まってる気がします。BE:FIRSTが「Milli-Billi」で全編ラップ曲をやったり、Number_iのヒップホップとか、自分たちの意志のもとに活動するのは「自分はアーティストなんだよ」っていうことを示すための一番の根幹ですよね。だから自分ができることとしては、アーティストの「こういう音楽がやりたい」っていう気持ちを具現化するお手伝いなんだと思います。あと、自分のソロはキュレーション活動だと思っているので、さっき話したようにいろいろな角度で日本のアーティストや音楽を広めていきたいと思ってます。先日、Spotifyで「MONJOE Works」っていうプレイリストを作らせてもらいましたが、いろいろなアーティストを発見する場になったらいいなと。ただの作家というよりは、そうやって音楽を繋いでいく存在になりたいですね。
Kaori Komatsu