BE:FIRST、Number_iらを手がける気鋭プロデューサー、MONJOEの歩みとビジョン
Number_iと共に刷新する「世界基準」
―Number_iの楽曲も複数プロデュースしていますが、まずデビュー曲の「GOAT」を手がけることになった経緯というのは? MONJOE:元々SHUNさん(FIVE NEW OLD)が別のアーティストに関するコンペシートをもらってきて、そこで「一緒に曲を作ってエントリーしてみよう」っていう話になって、ラップ曲だったのでPecori(ODD FOOT WORKS)を呼んだんですよ。3人でデモを作ってコンペに出したんですが、選ばれなかったんですね。その数カ月後にそのコンペに参加してたディレクターさんから曲を使いたいっていう連絡があって、あるアーティストの楽曲として採用されたので3人ですごく盛り上がって「またこういう機会があったら一緒に曲作ろう」っていう話をしていたんです。 その後に少し時間が空いて、Number_iのデビュー曲のコンペの情報が入ったんです。ヒップホップ曲っていうことは決まっていたし、「また3人でやろうよ」ってなって「GOAT」の原曲となるデモを作って提出しました。そうしたら、「平野紫耀くんがダンスで練習してる曲に雰囲気が似てるからこの曲がいい」って連絡をもらって。「でもブラッシュアップしたい部分が多々あるから打ち合わせさせてほしい」と言われて。直接メンバーに合って意見交換して、試行錯誤しながら作りあげていきました。 ―「GOAT」においてMONJOEさんが一番こだわった部分というと? MONJOE:とにかく他にはないものとして「突き抜けたい」っていう気持ちがありました。でも、突き放したい気持ちはなくて、あの3人がやるから意味があるものを作りたかった。J-POPの中にありがちなラップみたいにはしたくなかったし、なおかつ日本人しかできないものにしたかった。だから歌詞は全部日本語にしました。あとはその頃、僕たちの周りで「XGのラップがメチャクチャうまい」っていう話をしていて、あのラップとも肩を並べられるようなものをやっていきたいとも思いました。Number_iは世界を目指すことを掲げてるし、日本語でやりつつも、グローバルな意味でのヒップホップの同時代性をちゃんと担保したいっていう気持ちはありました。 ―3人のラップを聞いた時はどう思いましたか? MONJOE:最初からうまいと思いました。ヒップホップが好きなんだなって。だから「こういうことがやりたい」って伝えたらすぐにイメージが湧くんです。そういえば、「GOAT」の1回目のレコーディングで一通り録り終えた後、数日後に3人から「大変申し訳ないんですが、この箇所を録り直したいです」って申し出があったんですよね。それで別日を設けて録り直したら、ラップが見違えるほど良くなってました。MV撮影のために振付の練習をやった後だったので、体でフロウを刻めるようになった感じがすごくしました。それってまさにヒップホップのノリですよね。ダンスとすごく直結してる人たちなんだなって思いました。 ―アルバム『No. Ⅰ』のリードトラック「INZM」はどんな流れで完成したんでしょう? MONJOE:「アルバムのリード曲としてロックがやりたい。ただの焼き直しにはしたくなくて、ちゃんと今のシーンでも戦えるパンチラインのあるものにしていきたい」というのが最初の神宮寺(勇太)くんからのオーダーでした。いろいろと方向性を探って完成させましたね。 ―Number_iではヒップホップだけでなく「Midnight City」のようにメロウなR&Bも手掛けていますが、彼らの曲を手がけるうえで意識していることはありますか? MONJOE:他にはないことをやりたいっていうことですかね。よくあるボーイズグループっぽいことはやりたくない。その時々の流行は意識しながらも、完全に流れには乗っかりたくはないんですよね。あの3人は歌い方にそれぞれの特徴があって、個が強いグループなので、たとえトラックが凡庸でも彼ら発のものに聞こえてくる。制作サイドがそんなに意識しなくても、Number_iっぽくなるからこそ、その武器を使ってより他が真似できないことをどうやるかってことを考えてます。 ―「INZM」や「BON」は和を意識的に取り入れた曲ですが、例えば新しい学校のリーダーズのいくつかの楽曲や、BE:FIRSTの「Masterplan」といった曲も日本的な要素を取り入れています。そういう動きについてどう思っていますか? MONJOE:恣意的にそういうものを入れようとは思わないですね。一番危惧しているのはクールジャパン枠として見られることで。これはyahyelに参加していた頃から思っていたことで、和を入れれば外国人が喜ぶって考えがちですけど、そういうわけではない。別に意識しなくても、日本で音楽を聴いて育った人たちが集まって作る以上、日本っぽさは出てくると思うんですよね。例えばm-floは昔のヒット曲にも和っぽい音は入ってないけれど、日本の音楽のレジェンドとして韓国でも再評価されていますし、日本っぽさを押し売りする必要はないと思います。今挙げてくださった曲たちも和だけが魅力っていうわけではないですし。