自己中心的に見えるのは大人の発達障害「ASD(自閉スペクトラム症)積極奇異型」の可能性が【40代50代・「大人の発達障害」を理解する④】
ASD積極奇異型の困りごと、どう対応すればいい?
【周りのサポート】 「自分の環境内に、H美さんのような人がいる場合は、こうした脳の癖がある人もいることを理解して、嫌な人だと決めつけず、自分自身が嫌な気持ちにならない工夫をするといいと思います。 例えば、会議などで、ずっと一人でしゃべっていたら、『ちょっと私にも話させてください』などと、優しい口調で言ってみてはどうでしょうか? ただし、ASDの人は遠回しの言い方では理解できないことがあるので、今の状況のどこがよくないのかを具体的に説明することが大切です。 こうしたタイプの人はつい夢中になってしまいますが、優しくそれを指摘すれば、人との距離感の取り方や会話のルールについて学習していくと思います」 【当事者へのアドバイス】 「トライしてほしいのは、『人の話を聞く』練習をすることです。相手が話し終わるまで、きちんと聞きます。 そして、会話のキャッチボールをする練習をしてみます。例えば、『昨日は何をしていたの?』『ライブに行ったの』『誰の?』『〇〇さんの』というように、ひと言ひと言でやり取りしてみます。信頼できる人や家族などに協力してもらい、具体的に話す内容をマニュアルにしておき、実際に声に出してみます。 また、『私、ついしゃべりすぎちゃうので、長くなったら言ってね!』と最初に言っておくのもいいでしょう。 子どもを追い詰めない会話のポイントは、褒めるときにはしっかり褒めることです。『〇〇をよく頑張ったね』というように、具体的な成果を挙げて、そのプロセスを褒めます。そして大きな声を出さないこと、『~しなさい』という命令口調をやめるようにします。 子どもは親の所有物ではありません。親の意見を伝えるときは、子ども自身はどう思っているのかにも耳を傾け、敬意を払う心がけが必要です。 子どもとの関係、子育てについては一人で抱え込まずに、夫や父母、ママ友などに相談してみることも大切です。スクールカウンセラーや臨床心理士などの専門家に頼るのもいいと思います。必ずしも自分と同じ意見の人ばかりではないことを理解する努力をしましょう」 ※ASDの受動型のA子さんの場合は第3回<人が苦手で断り下手は大人の発達障害「ASD(自閉スペクトラム症)受動群」かも!?>参照
【教えてくれたのは】 司馬理英子さん 医学博士。司馬クリニック院長。岡山大学医学部・同大学院卒業後、1983年渡米。アメリカで4人の子どもを育てながら、ADHDについて研鑽を深め、1997年に帰国後、東京都武蔵野市に発達障害専門のクリニック「司馬クリニック」を開院。著書は『のび太・ジャイアン症候群』(主婦の友社)をはじめ、『わたし、ADHDガール。恋と仕事で困ってます』(東洋館出版社)、近著『もしかして発達障害?「うまくいかない」がラクになる』(主婦の友社)など、多数。 イラスト/小迎裕美子 取材・原文/山村浩子