自己中心的に見えるのは大人の発達障害「ASD(自閉スペクトラム症)積極奇異型」の可能性が【40代50代・「大人の発達障害」を理解する④】
「自分の話したいことだけしゃべりまくる」人が時々いるが、それは大人の発達障害のひとつである「ASD(自閉スペクトラム症)」の積極奇異型の人かもしれない。そんな人の困り事について、医学博士で発達障害を専門とする司馬理英子さんに伺った。 「大人の発達障害の困り事のなかに、『自己中心的に見える行動をとり、人とのコミュニケーションを上手にとれない』ということがあります。今回はそんなASDの積極奇異型の人によく見られる困り事と、その解決策を探っていきます」(司馬理英子先生) ※大人の発達障害について基礎知識は第1回<大人の発達障害とは? 今、増えている理由、症状や特徴、治療法について>参照。
【ASD積極奇異型のH美さんの場合】振る舞いが自己中心的に見える
H美さん(48歳)は中学生の娘が一人と夫の3人暮らし。営業職のリーダーとしてバリバリに活躍するキャリアウーマン。仕事はとても優秀だ。 今の職場の内容はH美さんにとって、とても興味がある分野なので仕事熱心。話すことが大好きなためセールストークも得意だ。仕事に強い信念があり、そのため営業成績は常にトップだ。しかし、実は人との距離感を上手にとったり、社会的なやり方を理解していない面もある。 感情表現が大げさでカッとしやすく、部下の失敗を大きな声で叱責してしまうことも。自分が正しいと思ったことは、部下も上司も関係なく、自分の言い分や正当性を訴える。 思ったことをそのまま言ってしまうので、社内で浮きやすく、部下などにも避けられ、実は社内であまり仲のいい人がいない。
会話のキャッチボールができず、一方的に話す
また、その場を仕切りたがる傾向があり、常に会話の中心にいないと気がすまないところがある。友人との会食でも、自分のことや自分の興味のあることばかりを一方的に話しまくりがち。 本人は思う存分しゃべったので大満足で、楽しい時間を過ごすが、他の人があきれていたのには気づいていない。いつもこの調子なので、友達関係が長続きしないことも。 また、家庭では、子どもにはこう育ってほしいという気持ちが強く、細かくルールを決めて、勉強や習い事のスケジュールをびっしり入れる。子どもが自分の思い通りに動かないとイライラして、つい大きな声で叱ってしまうことも。そのため、小学校まではおとなしく従っていた娘も、中学生になり、最近は反抗するように。 こうした家庭での態度は夫に対しても同様で、自分のこだわりを押しつけがちなので、夫婦関係もギクシャクしている。 【ASD積極奇異型の特徴】〇は受動型と共通 ●人とかかわるのが嫌いではなく積極的 ●思ったことはそのまま言う ●振る舞いが自己中心的に見える ●人との距離感が独特で、強引なときもある ●感情表現が大げさで、カッとなりやすく、衝動的 〇相手の気持ちがわかりにくい 〇言われたことを真に受ける 〇興味のあることにのめり込む 〇自分の規則やルールを守ろうとする 〇予定変更が苦手 「積極奇異型の人は、その名の通り積極性が強く、人とかかわることが嫌いではありません。しかし、相手や場面を問わず、自分の思ったことをそのまま言ってしまうので、きつい人という印象を与えます。また、会話がキャッチボールにならず、自分が話したいことだけを一方的に話すので、引かれたり、周囲を困惑させることがあります。 H美さんの場合、仕事内容が彼女の興味に合致したことで、持ち前の積極性とおしゃべり好きが功を奏し、仕事は成功しています。このタイプにはセールスマン系で成功する人がよくいます。 しかし、職場や友人、家庭での人間関係ではうまくいかないことも多いようです」