若者の「不詳の死」をどう防ぐのか――遺族らが語った兆候と背景
5分、10分でもいい。子どもと向き合う
今回の専門家チームの分析結果を、教育現場で生かす取り組みが早くも始まっている。先月、長野県の高校では、子どもの問題に取り組むNPO「CAPながの」が保護者に向けた研修を行った。まず共有されたのは自殺が集中する時間帯。さらに、子どものSOSに早く気づくために大切なのは、普段からの「聴く姿勢」ということを伝えた。 子どもに「どんな気持ちだった?」と内面を聞くこと。否定したりアドバイスをしたりせず、とにかく一生懸命に聞くこと。相槌を打って、うなずいて、目を見てまずは聞く。その大切さが伝えられた。 今回、取材に応じてくれた遺族たちは、若い人たちが死を選ばない社会に変わっていく手助けになるのならと、つらい体験を語ってくれた。 そらくんを亡くした父親は改めて言う。 「自殺で亡くなったお子さんのニュースを見て、『可哀想に』『いたたまれない』と思ってはいましたが、いざそういう立場になってみると、もう想像を絶する苦しみです。子どもの様子が些細なことでもいつもと違ったら、5分でも10分でも話を聞いてあげるだけで、もしかしたら亡くなるその一歩を止められるかもしれません」 有希さんを亡くした母親は、最後にこう話す。 「前日までなんてことなく普通に生きていた子でも、自殺してしまうということを、もっと知ってもらいたいと思いました。どうしたら防げるかを考えていけば、いま一緒に生きている人にどう寄り添うかを考えることにもなるし、みんなが目の前の人にもっと優しくなれると思うんです」