若者の「不詳の死」をどう防ぐのか――遺族らが語った兆候と背景
若者たちの死を防ぐため――始まった非公開記録の分析
原因が見えづらい若者たちの死を、どうすれば防げるのか。厚生労働大臣指定法人「いのち支える自殺対策推進センター」の専門家チームが、詳細な分析を始めている。メンバーは教育関係者や精神科医、弁護士、統計学の研究者たちだ。NHKスペシャル「若者たちに死を選ばせない」(6月13日<日>21時よりNHK総合で放送)取材班は、個人情報に触れないという条件で取材を許可された。 専門家チームが分析したのは、警察が作成した非公開の記録「自殺統計原票」だ。2009年から2020年に亡くなった30万4373人、その一人ひとりの時間や場所、原因が記されている。 まず注目したのは、「自殺を図った時間」。年代ごとに集中する時間帯が、今回初めて明らかになった。下の表は、色が濃いほど自殺が多いことを示す。40代以上は早朝や昼、午後3時台に多くなっている。20代、30代はそれに加え、夕方や深夜の時間帯にも増加していることがわかる。
10代を年齢ごとに詳しく見てみると、世代特有の傾向が浮かび上がってきた。学校が終わった後、夕方から夜の下校の時間帯に最も集中している。さらに、中学校入学前後の12歳は、朝7時から8時台の登校時間帯も多かった。
次に注目したのは、10代の「自殺原因」だ。 「いじめ」が全体に占める割合は1%。ただしこれは、警察が調べた過程でいじめが明らかになったものだけに限られている。一方で、「学友との不和」は5.7%。「進路に関する悩み」が9.5%。「学業不振」が10.5%。児童生徒の誰もが抱えるような悩みも原因となっているのだ。
専門家チームのリーダー「いのち支える自殺対策推進センター」代表理事の清水康之さんは、こうした分析結果を自殺対策に生かそうと動き始めている。 「自殺対策というのは、常に“手遅れ”です。亡くなった人がいて、その上で対策を考えているわけですから。今回の分析で、亡くなる前にどういうことが起きるのか、その関係性を明らかにして、対策を考えていきたいと思っています」