Women In Tech 30 発表:テクノロジー領域で未来を創造する30人の女性
9月25日発売のForbes JAPAN11月号では、テクノロジー領域で世界を変えるべく躍進する女性、ジェンダーマイノリティたち30人に光を当てた「Women In Tech 30」を発表した。2024年にはじめて開催し、23人のアドバイザリーボードに協力いただきながら開催した。 米『Forbes』、『Forbes JAPAN』では、コロナ禍以降、インクルーシブ・キャピタリズム(包摂的な資本主義)という概念を提唱してきた。すべての人を包摂しながら発展する資本主義の新しいあり方を意味する言葉だ。『Forbes JAPAN』では同概念に関する新企画として、「Women In Tech 30」を開始する。米『Forbes』で2018年に行った「The World's Top 50 Women In Tech」日本版である。同領域で世界を変える女性、ジェンダーマイノリティ30人を選出した。 選出方法は、同領域に詳しい有識者23人のアドバイザリーボードに、以下の3点から候補者推薦を依頼し、最終的に編集部で決定した。推薦基準は、アドバイザリーボードの専門分野において、1.業界の第一線、グローバルな舞台で活躍をしている経営者、起業家、経営層、リーダー層、エンジニア、研究者、2.業界の既存の常識を覆す挑戦をしているイノベーター、3.テクノロジー業界におけるDEI推進活動を推進しているリーダーの3点に対して、リーダーシップ、経済的影響力、社会的影響力という観点を加えたものだ。 日本における「Women In Tech」の現状は、米国をはじめとしたグローバルで見ると「遅れている」というのがアドバイザリーボードの共通見解だ。同領域のジェンダーギャップに関する数字で見ても明らかであり、現状は多くの問題を抱えている。ただ、産官学が社会課題として共通認識し、今回選出した30人をはじめ、その改善に向けた動きがトップダウン、ボトムアップともに出始め、加速してもいる。日本は「今」、大きな転換点を迎えているとも言えるだろう。 そんな絶好の「今」だからこそ、今回『Forbes JAPAN』では同企画にもうひとつの思いを加えた。それは、「次世代、将来世代のロールモデル」しての側面だ。世界や社会を舞台に「よりよい世界、社会」を目指して躍進している、そしてジェンダーギャップという課題に立ち向っている30人の姿は次世代、将来世代が自分たちのキャリア、生き方を想像するためのロールモデルと言える。20年前にベストセラーになった作家・村上龍の『13歳のハローワーク』の更新版、最新版として届けることができないかと思っている。 インクルーシブ・キャピタリズムには、ジェンダー・インクルーシブなイノベーション・エコシステムが不可欠だ。「Women In Tech」企画が、そのエコシステム構築へ向けたムーブメントにつながればと考えている。本記事では「Forbes JAPAN Women In Tech 30」に選出した30人を紹介する。 ■最高峰ITプロフェッショナル集団を牽引 井上裕美|日本アイ・ビー・エム 取締役 日本IBMグループ最大規模の、全国に技術者を擁する組織の社長に就任し、最高峰のITプロフェッショナル集団として社会のデジタル変革を実現する会社をリード。先進的な開発技術のスキルを身につけながら技術者として国内外のプロジェクトを経験できる「IBM地域DXセンター」を全国8拠点に設立。I/U/Jターンを推進し、地域の協力会社を含め2500人体制を目指し女性技術者を含めた多様な採用とデジタル人材育成により、新しい働き方の実現と地域経済への発展、日本社会の変革の加速に貢献している。 いのうえ・ひろみ◎2020年日本IBM官公庁インダストリー理事就任後、20年7月に日本IBMデジタルサービスの設立に伴い代表取締役社長に就任。22年日本IBM取締役に就任。2児の母。 ■リンクトイン・ジャパン初の女性代表 田中若菜|リンクトイン・ジャパン日本代表 田中若菜が2023年3月から日本代表(初の女性代表)を務めるLinkedInは、世界200以上の国と地域に10億人以上のメンバーを有する世界最大プロフェッショナルネットワークを提供している。ユーザーは自身の職歴やスキルをプロフィールに公開し、他のユーザーや企業とつながることが可能。企業への採用やマーケティング支援を行うほか、世界最大級のオンライン学習サービス「LinkedInラーニング」も提供している。LinkedInは、世界中で働くすべての人々に経済的なチャンスをつくり出すことを目指す。 たなか・わかな◎LinkedInの日本代表。ハーバード・ビジネススクール卒業。コンサルティング、日本ロレアルやグーグルにてマーケティング、営業、DX推進担当を歴任。2023年3月より現職。 ■米テック経営陣から「家族の暮らし支援」へ 松岡陽子|パナソニック ホールディングス執行役員 Panasonic Well本部長 Yohana 創業者 兼 CEO ハーバード大学などで、人体・脳のリハビリを促すロボット機器開発に携わり、研究成果が認められ、天才賞と呼ばれるマッカーサー賞を受賞。受賞賞金でヨーキーワークス財団を設立。2009年末、共同創業者としてGoogle Xを設立、Nestに参画。Apple副社長、Google NestCTO、Google副社長などを歴任後、 19年にパナソニックへ入社。21年に、忙しい家族の暮らしを支援するファミリーコンシェルジュサービス「Yohana」をローンチ。日米累計約1万以上の家族をサポート、1カ月当たり平均約13時間のゆとり創出に貢献してきた。 まつおか・ようこ◎米ハーバード大学博士研究員などを経て、Google X共同創業者、Apple副社長、Google副社長などを歴任。2019年にパナソニックに入社し、21年に「Yohana」をローンチ。 ■Google Cloud ソフトウェアエンジニア 岩尾 エマ はるか|Google Cloud ソフトウェアエンジニア Google Cloud の SRE(Site Reliability Engineering:サイト信頼性エンジニアリング)チームに所属し、Google Compute Engine を中心とするシステム運用基盤の開発や、システムの信頼性の向上に取り組む。また、社外のさまざまな開発者コミュニティに参加し、新技術に関する講演やオープンソースソフトウェアへの貢献も行う。未来の技術者に情報科学の魅力を伝えるべく、自身の夢でもあった円周率計算の世界記録を2019年(31兆4000億桁)と22年(100兆桁)に樹立した。100兆桁の計算には157日かかった。 いわお・えま・はるか◎筑波大学大学院システム情報工学研究科修了。家電メーカーなど数社を経て、2015年、Googleに入社。19年に渡米、シアトルオフィス勤務。自身がクィアであることを公表している。 ■大手ベンチャーTech DE&Iをリード 神谷 優|サイバーエージェントTech DE&I Lead Tech DE&Iプロジェクトは、2023年にサイバーエージェントで立ち上げた「IT業界のジェンダーギャップ解消」を目的とした取り組み。主な活動内容として、社内エンジニアを対象とした「IT業界ジェンダーギャップ勉強会」や「無意識バイアスワークショップ」、DE&I研修が挙げられる。また、女性エンジニアのための技術とキャリアのカンファレンス「Women Tech Terrace」や、女性を対象としたインターン「Women Go College」開催を通じ、女性エンジニアのエンパワメントと技術・キャリア支援を行う。 かみや・ゆう◎サイバーエージェント新卒エンジニア職1期生入社。メディア事業でtoC向け開発に携わる。Women Techmakers Ambassadorを務めPodcast配信等ジェンダーギャップ解消活動を行う。 ■女性エンジニアエンパワーメント第一人者 戸倉 彩|日本アイ・ビー・エム テクノロジー事業本部 カスタマーサクセス部長 ITエンジニアの力で世界をポジティブに変えるために、テック系コミュニティの活性化やジェンダーギャップ解消に向けた女性エンジニア支援に重点をおき、セッション登壇や記事執筆を行う。近年はデータ&AI分野に注力し、2020年からWomen in Data Science Ambassadorとして、30年までにデータサイエンス領域で活躍する女性比率を30%に引き上げる目標の実現に向けた活動にも取り組む。23年より東京都主催の都知事杯オープンデータ・ハッカソン審査員も務めている。行政とITエンジニアらが行う社会問題解決に向けた取り組みなどを応援。 とくら・あや◎システムエンジニア、日本マイクロソフトのテクニカルエバンジェリスト、スタートアップCTO等の経験を経て、2018年日本アイ・ビー・エム入社。現在はカスタマーサクセス部長を務める。