EVシフトで2020年代後半を「失われた5年」にしないために必要な産業の変革
「EVシフト」は、これからどうなっていくのか? その問いに対して、「短期的には踊り場だが、中・長期的には確実に進む」という見方をする人が、自動車産業界には少なくない。 【写真】製造・販売するクルマを「電動化すればいい」だけではないのがEVシフト 直近では、経済安全保障推進法によって、EV向けバッテリー製造に対し、政府から日本の自動車メーカー各社に手厚い補助金の支給が決まった。これによって、日本にとってのEVシフトに向けた地盤固めが進む。 ところが、欧州では今、EVシフト減速の流れが鮮明化している。
■ベンツ「市場環境がまだ整っていない」 これまでEVシフトの牽引役だった、欧州グリーンディール政策の政策パッケージ「Fit for 55」については、「2035年までに欧州域内で乗用車新車100%ZEV(ゼロ・エミッション)化」という法案整備が宙に浮いた状態になっているからだ。 欧州連合(EU) がいうZEVとは、BEV(バッテリー駆動の電気自動車)とFCEV(燃料電池車)だが、ドイツが合成燃料を使う内燃機関(エンジン車、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車)の併存も認めるよう求めている。
その影響は欧州の自動車メーカー各社に広がっており、直近ではスウェーデンのボルボが、現地時間の9月4日、これまで掲げていた「2030年までに新車100%EV化」という目標を事実上、撤回したことがニュースとなった。 また、ドイツのメルセデス・ベンツも今年2月、これまで掲げてきた「市場環境が整えば、2030年までに新たに導入する新車は100%EV化する」という方針において、「市場環境がまだ整っていない」との解釈を示している。
あわせて、アメリカではテスラについて、「新しい技術を先取りするアーリーアダプターの需要が一巡した」という見解が経済界に広まったり、フォードやGM(ゼネラル・モーターズ)がEVシフトの方針を修正し、アメリカで需要が高まっているハイブリッド車の重要性に注目し始めたりしている。 こうしたグローバルで変化が起こる中、日本では8月上旬に一部報道で「トヨタがサプライヤーに対してEV生産台数の中期目標の下方修正を知らせた」という情報が流れた。ただし、これについて、トヨタから正式なコメントやプレスリリースはない。