EVシフトで2020年代後半を「失われた5年」にしないために必要な産業の変革
自工会では今、自工会そのものの改革と、自動車産業界の課題解決に向けた構造改革をともなう施策を推し進めているところだ。 ■「自動車産業のカタチ」はそれでいいのか? そうした踏み込んだ議論を経たうえでの、国や地域における社会情勢を加味した「マルチパスウェイを主体とした方針は揺るがない」という自工会としての視点は、十分に理解できる。 しかし、その視点は「従来の自動車産業」のカタチから大きく変わらない。
“本格的なEVシフト”に必要なのは、新車というハードウェアの製造・販売・2次流通といった「EVありき」や「インフラの兼ね合いも重要」といった視点ではなく、「社会体系ありき」や「エネルギーの有効活用ありき」を起点とした「自動車からモビリティへ」という“産業構造の再定義”ではないだろうか。 自工会は、あくまでも製造者による業界団体であり、販売や修理などを担うディーラーをはじめとした“地域社会に直結する事業者”との意識上の距離が、まだ残っている印象がある。自動車メーカーの事業形態が「製造・卸売販売」に特化した、いわゆる「製販分離」だからだ。
過去10年間を振り返ると、コネクテッド/自動運転/シェアリングなどの新サービス・電動化(CASE)や、モビリティ・アズ・ア・サービス(MaaS)といった、欧州発の新しい考え方が日本自動車産業界にも急激に広まった。 これを、一般的には「100年に一度の自動車産業変革」と呼んできた。 だが、EVシフトの浮き沈みで実証されたように、実際には欧米中の政治的な思惑とそれにまつわる投資が大きく影響している。日本自動車産業界は、それに翻弄されているような印象が強い。
また、社会変化に応じた「製販分離」を抜本的に見直すような具体的な動きも事実上、生まれていない。 そうした中、日本政府は自動車産業界と連携して「モビリティDX(デジタル・トランスフォーメーション)」という表現を使い、2030~2035年に向けた日本の自動車/モビリティ産業の勝ち筋を模索している。 足元では、2024年10月15~18日に幕張メッセで開催される「Japan Mobility Show Bizweek 2024」で、自動車産業界とベンチャー企業との化学反応を支援する舞台を準備している。