介護で困ったときに読んでほしい本を扱うオンライン書店員がおすすめする本3選「母の介護中、できないことが増えても解決策を見つけていた」
年老いた親の住み替えを描いたエッセイ「住環境の大切さ」
『最後は住みたい町に暮らす 80代両親の家じまいと人生整理』井形慶子著(集英社) 「本当は商店街のそばで暮らしたい」というお母さまの一言から始まった、80代両親の住み替えを綴ったエッセイ。両親は「高齢者施設ではなく、自宅で暮らしたい」という思いからがあるからこそ、実家を売却しマンションへの引越しを決意。 持ち物の整理や遺言状作りなど参考になる点が多く、特に「なるべく元の部屋と似た雰囲気の部屋作りをした」というエピソードは、住環境がいかに大切なのかを感じさせてくれます。 著者はインテリアやライフスタイルの雑誌を手がけた編集者。実際のお部屋も写真も掲載されています。
母の介護ではベッドより「布団」のほうが楽だった
母の介護は6年半以上続きました。途中から肝硬変を患ったことにより体調もいろいろと変化したのですが、結局最後までベッドは導入しませんでした。 2Kの小さな家に大きな電動ベッドを入れるためには、いろんなものを手放さなければならなかったですし、感覚に障害のあった母はエアコンの風が当たると皮膚にピリピリと痛みが走るようで、自由に居場所を変えられる布団の方が楽だったのです。 ちょうど今くらいの冬の季節は、布団をこたつのすぐそばに敷いていました。身体を起こして少し向きを変えればこたつに入ることができるので、体力が無くなってきた晩年もふたりで一緒に食事がしやすく、私が仕事にでかけ母ひとりのときは、こたつでテレビを見たり読書をしたり、疲れたら横になったりと自由に過ごしていたようです。 介護の形は十人十色。ケアされる本人の状況だけでなく、ケアする側の環境によっても必要なものは変わってきます。介護の先輩たちの知恵を知ることで選択肢を増やし、自分にぴったりな介護を見つけてもらえたらうれしいです。