風邪の初期症状の正しい理解と市販薬の使い方を知る…「ひき始めに服用する」わずか4%
■ぶるっと悪寒がしたら葛根湯か麻黄湯
そんな風邪のひき始めは、漢方薬がお勧めだという。どの漢方薬をチョイスすればいいか。 「3大漢方薬である葛根湯、麻黄湯、小青竜湯です。いずれも体を温めて免疫力を高め、改善をうながします。熱があっても悪寒がするような風邪には特に効果的です。使い分けとしては、軽い悪寒がしたら、すぐに葛根湯を飲みます。寒けと同時に節々が痛むときは麻黄湯です。麻黄湯は高熱と悪寒や節々の痛みといったインフルエンザにも有効ですから、葛根湯と麻黄湯は自宅に用意しておくとよいでしょう」 いずれにしても、悪寒がしたらすぐに飲むことが大事だ。これを忘れずに守ろう。漢方薬については、服用後に慌てないことも覚えておきたい。どういうことか。 「葛根湯や麻黄湯が効いてくると、体がぽかぽかと温まって汗をかいてきます。この体温上昇は漢方薬が効いてきたサインで、『熱が出た』わけではないので、くれぐれも解熱剤を服用しないことです」 麻黄湯については、抗インフル薬タミフルと比較した研究がある。解熱効果に差はなかったものの、節々の痛みなど熱以外の症状の改善は麻黄湯がより早かった。タミフルに上乗せして使うこともできるから、インフルも拡大している今、麻黄湯も自宅にあると便利だろう。 では、小青竜湯はどんなときに使うか。 「小青竜湯は、鼻水や鼻づまりなど鼻炎症状の改善に効果的で、特に水のような鼻水のときに重宝します。花粉症はじめアレルギー性鼻炎も抑えてくれますから、風邪症状が鼻から始まる人や花粉症の人に最適です。『あれ、鼻にきたかも?』といったときに小青竜湯を飲むとよいでしょう」 ■残った症状を単独効能の対処療法で 悪寒は葛根湯か麻黄湯で、鼻の違和感は小青竜湯と覚えておこう。3大漢方薬に西洋市販薬を組み合わせた二刀流が体を守る“バリアー”として威力を発揮するという。 「初期の風邪は3大漢方薬で抑え、残った症状は西洋の市販薬を使うとよいと思います」 漢方薬の使用後に咳や痰がつらければ、咳止めや去痰薬を、のどの痛みが残ったらそれに特化したものをというわけだが……。 「総合感冒薬は、のどの痛みも咳も鼻水も、そして熱も抑える成分が含まれています。それに加えて最近は、『のどに』『咳に』『鼻に』などとより強調する症状に対する成分が強化される傾向です。そんな成分強化タイプにも、ほかの成分が含まれていますから、残った症状に使う場合はほかの成分を余計に体に取り込むことになる。ですから、漢方薬との二刀流で市販薬を使うときは、総合感冒薬ではなく、症状に適した単独効能の市販薬を選ぶことです。そうすれば不要な成分による副作用もありませんから」 富家氏によると、医師は風邪など感染症の人を診察すると、少し水を飲むことがあるそうだ。どういうことか。 「診察は感染リスクが高いので、医者は診察の合間に手洗いやうがいをするほか、次の患者さんを診察室に呼び入れる前に口に水を含むこともあります。もちろん、マスクはしていますが、それでもウイルスなどの侵入はゼロではありません。飲んだ水で口のウイルスをすぐに洗い流すイメージです。エビデンスはありませんが、現役時代、私も周りも風邪で苦しんだ医者はあまり聞いたことがありませんから、経験則ながら効果はあると思います」 これからが冬本番。市販薬をうまく取り入れながら、感染症シーズンを乗り切ろう。