楽天モバイルの通信品質が改善したワケ 5Gやプラチナバンドの現状、ネットワーク戦略を竹下副CTOが解説
エリアと容量の両にらみで品質を改善、5Gは都市部でのエリアも急拡大
参入当初から急ピッチで基地局を建設し、エリアを広げてきた楽天モバイルだが、その通信品質については次の方針で取り組んでいるという。1つ目が、日本全国どこでも安定してつながりやすいこと。もう1つが、データ通信量の大きなゲームや動画視聴でも遅延や途切れがなく快適に使えることだ。竹下氏は「日本はどの事業者もおしなべて通信品質が高い」としながら、「後発といえども、そこに食らいついていく必要がある」と語る。 前者のつながりやすさについては、基地局の数を増やしてきたことで、徐々に評価が高まっている。ユーザーからも「つながらないところが減ってきたという声を多くいただくようになってきた」と竹下氏。実際、調査会社Opensignalが発表した「No Signal Availability(信号を受信できない状態)」という指標では、2023年1月に1%を超えていたが、2024年3月時点ではこれが0.57ポイント改善したという。他社も交えたグラフで見ると、3位のソフトバンクとみられるキャリアと数値が近づきつつあることが分かる。 電波改善に関しては、ユーザーから寄せられた通信品質レポートを活用。現状では、エリアに関する問い合わせとして多いのが屋内施設やビル間の路地だといい、前者は屋内基地局の整備、後者は6月にスタートしたプラチナバンドの活用などでホワイトスポットを解消する動きを推進しているという。 プラチナバンドは当初、1局のみの状態が続いたが、現在は複数局を運用しているという。 「具体的な局数は控えたいが、複数局を運用する中で遠い局同士でも電波が届くことが見えている。今現在、1.7GHz帯が届かないところで、プラチナバンドに接続するユーザーがドンと増えるため、展開効果は思った通りというのが見えている中での印象。これから700MHz利用推進協会とともに干渉調整のプロセスを踏んで局数を増やしていくので、来年(2025年)ぐらいにはいい数字を言えるようになる」(竹下氏) 現時点では局数が少ないため、スポット的になっているプラチナバンドだが、楽天モバイルでは「基本的に面でつながるように展開したい」という方針だ。 もう1つの品質対策が、ネットワーク容量を増加させるところにある。課題になっていた地下鉄の駅間などは、共用基地局の帯域幅を5MHz幅から20MHz幅に拡張。改善は徐々に進められており、2025年3月末までに全体の40%が完了する見込みだ。竹下氏によると、「改善できたエリアから、順次ポスターを貼るなどして案内を進めていく」という。 とはいえ、楽天モバイルのユーザー数は毎月10万以上のペースで増加しており、1ユーザーあたりのデータ使用量も増えている。現状では、毎月平均31GBものデータ容量が消費されているという。キャパシティー対策として、帯域幅が100MHzと広い5GのSub6を拡大することも重要になる。楽天モバイルでは、3.7GHz帯の5Gを展開しており、現在、約1万7000局を設置。そのうち8割の基地局は、大容量化を行えるMassive MIMOに対応している。 「Massive MIMOの基地局は無線機の値段が少し上がってしまうが、後発事業者で、4Gが基本的には1.7GHz帯の1波に頼る運用なので、(容量対策として)Sub6の重要性がかなり高い。新しい技術や高度な技術は積極的に活用することを当初からの方針として決め、このような運用になっている」(竹下氏) また、衛星通信の地上局との干渉条件緩和を受け、Sub6の出力を増強。電波がより飛びやすいよう、アンテナの角度も調整することで、関東地方のエリアを2.1倍に拡大させた。楽天モバイルは、4月に関東地方のSub6エリアを年末までに1.6倍に拡大すると発表していたが、ふたを開けてみたら2.1倍まで広がった。時期も約1カ月前倒しにできたという。当初予定よりエリアが広がった理由は、「局数を予定より増やしたことと、パワーを上げるだけでなく、アンテナをより上向きして電波を届きやすくできる局が結構な数あった」(竹下氏)からだという。 東海地方や近畿地方でもこうした対策は完了しているといい、前者は1.3倍、後者は1.7倍、セルあたりの5Gに流れるトラフィックが増加したという。東京都内に至っては、これが2.3倍まで拡大した。5Gに接続できるユーザー数も東海地方では1.1倍、近畿地方では1.4倍、東京都内では1.5倍に増加した。